ビットコインは価格の高騰(および最近の暴落)で世間の注目を集めたが、最近突然現れたわけではない。
ブロックチェーンを用いた暗号通貨であり、この種の分散型決済手段としては最初の例であるビットコインが登場したのは2009年のことだ。ところが最初の5年間は、ビットコインを未来のお金だともてはやす熱狂的な支持者や専門家以外には、あまり注目されなかった。
しかし、ビットコインの匿名性の高さに強い魅力を感じたグループがあった。それがサイバー犯罪者だ。ビットコインはダークウェブで、表に出せない製品やサービスの取引に使われた。これは、比較的入手が容易で、信頼性があり、取引状況や最終的な金銭の受け取り手を追跡することが極めて困難だからだ。
ビットコインは、ランサムウェアを利用する攻撃者が暗号化されたファイルやシステムと引き換えに身代金を要求する際に使う標準通貨となっており、暗号通貨が持つ追跡が難しいという性質は、疑いなくランサムウェアの増加に一役買っている。
ただし、ビットコインが登場する前にも、「Ukash」や「paysafecard」などの電子マネーが身代金の支払い手段として使われており、その当時から、ランサムウェア関係者が新たな決済手段を模索している兆候は見られた。
欧州刑事警察機構(ユーロポール)のエグゼクティブディレクターRob Wainwright氏は最近、「2018年には、サイバー犯罪で使用される暗号通貨が、徐々にビットコイン以外の暗号通貨に変わっていき、一般論として、法執行機関がサイバー犯罪に対抗するのが難しくなっていくだろう」と警告している。
サイバー犯罪者がビットコインの利用を避けようとする理由はいろいろある。その理由には、注目が集まり、貨幣価値が上がったことで、価値の小さな変動でもビットコインのコストが大きく変わる可能性があることや、警察がビットコインの痕跡を追跡して逮捕につながった例が増えていることでも分かるとおり、ビットコインの匿名性は、従来信じられていたほどではないと思われるようになったことなども挙げられる。
Flashpointの東アジア調査および分析ディレクターJon Condra氏は、米ZDNetに対して、「『AlphaBay』に代表されるように、最近ではビットコインに依存していた有名サービスが閉鎖に追い込まれる例も複数あり、サイバー犯罪のエコシステムに大きな影響が出ている」と語った。
「それらのサービスはビットコインに非常に強く依存していたため、ビットコインは思っていたほど安全ではないと感じさせる心理的な効果が起きており、匿名性が失われたビットコインの代わりとなる決済手段が模索されている」と同氏は言う。
ビットコインの人気は、取引にも影響を及ぼしている。まず、価格変動が激しいため、一部の企業はビットコインによる決済を拒否し始めている。これは、ビットコインではそれらの会社の製品やサービスが購入できなくなっていることを意味している。
また価値が高騰したことで、ビットコインに対する一般の関心が急激に高まり、その人気に釣られて、あるいは高騰によって利益を得ることを目的として、ビットコインを購入しようとする一般消費者の数が増えた。