2007年に私が日本へやってきた際、驚いたことがある。クレジットカード決済をしようとするとほぼ毎回「現金払いのみ」と言われて受け付けられず、支払いができなかったことだ。現金を持ち歩く文化が鮮明になったのは、それからだった。
弊社Input Output HKの共同創業者であるCharles Hoskinsonも、新幹線の切符を仲介業者から買おうとした際に、クレジットカード払いができなかったことがあった。それまで彼は世界中でそのカードを使い、列車の切符を買ってきており、愕然としたのも無理はない。
時は過ぎて2017年、日本は世界で最も仮想通貨を使いやすい場所になった。大手家電店のビックカメラなど、仮想通貨での決済を受け付ける店が増えている。ビックカメラでは顧客からの要望が予想以上だったことを受け、2017年4月に2店舗から開始した仮想通貨の受け付けを、半年後の10月には全店舗へと拡大した。事実、2017年の状況は2007年に私が上陸した世界とは別物になっていた。
最も特筆すべきなのは、2017年という年は、日本がブロックチェーンや仮想通貨を巡るレースでリーダー的役割を担った、日本にとって分水嶺となる年だったことだ。日本はブロックチェーンの最大市場になっただけではない。
メガバンク3行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行) が、新たに出現した小規模なライバルに追いつこうと、富士通が提供するブロックチェーン技術に基づいてピアツーピア送金サービスの試験を開始した。
2017年は個人レベルでも、私の会社がカルダノをスタートさせた特別な年になった。カルダノは私たち自身で設計し構築した仮想通貨だ。カルダノの最初の保有者は92%以上が日本人だった。そのため、チャールズと私がイーサリウムの創業者という背景も踏まえ「日本版イーサリウム」とも呼ばれている。
最初の保有者が私たちを信頼してくれたおかげで、カルダノは現在時価総額で仮想通貨のトップ5に入り、評価額は120億USドル超に上る。これはまさに私たちが2017年に手にした最高の成果、さらに言えば日本の成果だ。
2018年に目を向けると、技術が進化し、成熟し、真の成果が出るに伴い、ブロックチェーンの成長には弾みがついていくだろう。すでに政府は妥当な対応の協議と規制枠組み作成に着手しており、規制をより強めながらも発展の余地も十分残そうとしている。
ブロックチェーンは試験段階からミッション・クリティカルな応用段階へと急速に進み、より効率性、生産性が高まることだろう。仮想通貨が基づく技術は、それ自体がさまざまな応用方法のある大きなイノベーションであるため、可能性は無限だ。
利用されるケースやシチュエーションが飛躍的に増えることが期待され、それによりブロックチェーンの利用範囲が過去にないほど拡大するだろう。さらに、ブロックチェーン同士を安全に、かつ簡易につなぎ合わせて、異なる仮想通貨を交換・決済するための開発も進んでいる。この技術の導入はさらに広がると考えられ、また金融サービス業界にも劇的な変革をもたらすだろう。
しかしこの好機に乗ろうとしているのは銀行や金融機関だけではない。製造業や医療といった幅広い業界からもワークグループに参加して、非効率的で脆弱なプロトコルに代わり、ブロックチェーン技術を利用するため、プログラムの試験を行っている。
世界中の起業家が、ブロックチェーンに基づいて業界を揺るがすような製品やプロトコルを立ち上げている中、関心を持たないままでは日本企業は不意打ちを食らうことになるかもしれない。こうした状況を受けてInput Output HKは2017年、東京工業大学と共に仮想通貨共同研究に出資した。
この共同研究の主な目標は日本でブロックチェーンの専門家を育成・開発することだ。そして喜ばしいことに、すでに先端的な研究が進んでおり、希望者が複数いればブロックチェーン上で取引できる新たな可能性を提供できるようになった。