器用に制御するAIを三菱電機が開発--変化を瞬時に把握しリアルタイム対応 - 5/14

大河原克行 2018年02月11日 07時30分

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 三菱電機は、同社の人工知能(AI)技術「Maisart」を活用し、対象物の状況の変化を瞬時に把握して、リアルタイムに対応する「器用に制御するAI」を開発した。製造工程などに配備される産業用ロボットなどへの応用を想定しており、形状が変化する柔軟物や状況が大きく変化する対象物に対しても、容易に対応し、生産工程を自動化できるのが特徴だ。

 従来の仕組みでは、アームロボットなどの設置において、実行時の作業環境を固定しており、実行中の状況が変化する場合には、設計者が事前に状況変化を想定したり、形が変化する柔軟な物体や、複数のロボットが同時に稼働する環境下など、想定や予測が難しい状況変化には対応できなかった。

 三菱電機 知能情報処理部長の三嶋英俊氏は「生産現場では、大量生産から、多品種変量生産、変種変量生産へとマス生産方式が移行しているが、昨今では、ひとつひとつが異なる仕様となるマス・カスタム生産方式が求められている。これまでのマス生産では、ロボットアームを使用する場合には、部品に合わせて専用の固定治具を制作し、位置精度を高めるといった手法が取られてきたが、マス・カスタム生産では、さまざまな組み合わせが発生するために、治具で固定せずに、状況に合わせて作業ができる生産技術が必要になってくる。

 優秀な働き手を確保することでマス・カスタム生産に対応することもできるが、人材の確保が難しく、人と同じように器用でフレキシブルなロボットが求められている。今回の『器用に制御するAI』では、対象物の状況変化にあわせた稼働が可能になり、しかも、少ない計算量で、ロボットをリアルタイムに動作させることができる。マス・カスタム生産に対応した形で、ロボットアームなどを活用できるようになる」とした。

 例えば、PCの生産現場では、ノートPCやタブレット、デスクトップPCなど、さまざまな機種があり、そこに接続されるストレージやマザーボードも仕様ごとに異なる。ケーブルコネクタの形状や位置が異なる場合もあり、これを1台のロボットアームで対応するのは難しい。だが、今回開発したAI技術を活用することで、ケーブルコネクタの形状や位置、ケーブルの張り具合などを把握。リアルタイムでこれを制御して正しい位置にはめ込むことができる。

 「これまでにも同様の取り組みはあったが、従来の技術では、動きにスムーズさが欠け、多くの計算資源が必要であること、複雑な形状の対象物をリアルタイムに認識して、サブミリオーダー精度と呼ばれる±0.25mmの高精度な位置制御を行うことができないという課題があった。今回の技術では、力覚センサとカメラなどの複数センサから常時フィードバック情報を受け取り、ディープラーニングでリアルタイムに推論した値を、駆動部の制御に使用することを繰り返し、3.5msというリアルタイム性で制御できる」という。

 センサやカメラを通じて、画像、荷重、電圧値などの情報を取得。これらの情報をもとに、制御指令値をAIが決定。リアルタイム制御で、駆動部に指示を出し、さらに、状況変化に応じて制御できるようにする。「どんな状況にあるのか、どんな力加減が最適なのかを考え、状況の変化にも追随することができる」という。

 デモストレーションでは、ロボットアームを使用し、ケーブルコネクタを接続する際に、コネクタ部の位置を人為的に移動させ、それをリアルタイムにAIが判断して、ロボットアームが追随。コネクタ部を固定すると、その場所にケーブルを差し込む様子をみせた。

 「2017年5月に発表した『スマートに学習できるAI』技術を活用。ディープラーニングとともに、自ら試行を繰り返し、最適な行動を自律的に探索できる強化学習を組み合わせた深層強化学習を採用することで、短期間で、汎用的な制御工程への応用が可能になった。これにより、最適な制御アルゴリズムを自ら獲得することができ、複雑な制御ソフトウェアの再設計が不要になる。学習時間の大幅に短縮のほか、データ収集コストや制御設計コストの課題を解決することができる」とした。

 まずは、同社製品に搭載することを前提としており、製造現場で利用されるAGV(無人搬送台車)にロボットアームを搭載し、ロボットの動きによって、AGV自体が動くといった用途での利用も見込んでいるという。

 三菱電機 情報技術総合研究所長の中川路哲男氏は「三菱電機では、工場やビル、クルマといった領域において、数多くの機器を保有している強みを生かし、機器、エッジをスマート化して、賢く情報を収集し、ここにAIを活用して、効率化、快適性、安全・安心などの顧客価値を提供している。Maisartでは、ディープラーニング、強化学習、ビッグデータ解析の3つの観点から開発を進めており、特にアルゴリズムをコンパクト化し、演算量を削減できるところに特徴がある。独自のAI技術によって、すべてのものを賢くしていきたい」と述べた。

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