AI技術の活用で「自律型データセンター」の実現を支援--HPE - 2/5

渡邉利和

2018-03-12 11:14

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は3月7日、同社のストレージ戦略に関するプレス向け説明会を開催した。人工知能(AI)技術の活用によるデータセンターの将来像を示した。


日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 データプラットフォーム統括本部 エバンジェリストの高野勝氏

Hewlett Packard Enterprise HPEストレージ部門 製品管理&マーケティング担当ディレクターのVish Mulchand氏

Hewlett Packard Enterprise HPE Nimble Storage 分析&カスタマーサポート担当バイスプレジデントのRod Bagg氏

 まず登壇したハイブリッドIT事業統括 データプラットフォーム統括本部 エバンジェリストの高野勝氏は、同社の「ハイブリッドIT戦略」について説明し、「目指すのは人々の生活の向上と働き方の改善」だとした。

 その上で、製品面での取り組みの基本的な考え方が「ハイブリッドITをシンプルに」という点にあることを踏まえ、ハイブリッドIT運用を円滑にするツール群としてさまざまなSaaSを今後提供していく予定であるとした。中でも、2017年11月に買収完了したNimble Storageの予測分析機能「InfoSight」の対象をストレージからITインフラ機器全体に展開し、“AI for the Data Center”というコンセプトの中核に据え、自律型データセンターの実現を目指していく。

 米HPE HPEストレージ部門 製品管理&マーケティング担当ディレクターのVish Mulchand氏は、同社のストレージ戦略全般について説明。同氏は、HPEのハイブリッドIT戦略では「Keep the business running(ビジネスを動かし続ける)」と「Deliver new products & services faster(新製品/サービスを迅速に展開する)」の2つのエリアにともに注力していくとした上で、重要な3つの要件として「Predictive(予測可能性)」「Cloud Ready(クラウド対応)」「Timeless(ロスタイムのない柔軟性)」を挙げた。

 Predictiveとは、障害を発生する前に予測し、対応できる能力を指し、「HPE InfoSight」で全世界のユーザーから収集したデータをAI技術で解析することにより、高精度な予測を実現している。Cloud Readyでは、単にクラウド規模の拡張性のみではなく、オンプレミスとクラウドの間で自由にデータを移行できることも含む。これを実現するサービスとして、オンプレミスとクラウドのどちらからもデータアクセス可能な「HPE Cloud Volumes」(現時点では国内未提供)や、クラウドを活用したバックアップソリューションである「HPE Cloud Bank Storage」などについても説明した。

 また米HPE HPE Nimble Storage 分析&カスタマーサポート担当バイスプレジデントで、InfoSightを立ち上げたというRod Bagg氏は、InfoSightに関して説明。Nimble StorageがInfoSightの取り組みを開始したのは9年ほど前で、元々はトラブル対応を行うIT部門の負担の軽減を図り、自律型の運用管理を可能にすることを目指したものだと言う。

 現在のITの大きな課題の1つに「アプリケーションとデータのギャップ」、つまりアプリケーションが必要とするタイミングでデータが供給されない、という問題があるが、実はこの問題が生じたケースの半分以上では主たる原因がストレージ以外の部分にあるという。ITインフラ全体から問題の部分を見つけ出す必要があるため、InfoSightが効果的なサービスを提供し続けるためにも、ストレージのみをターゲットとするのではなく、サーバやネットワークまで含めたITインフラ全体をカバーする必要があるというわけだ。

 自律型コンピューティングに関しては、2001年頃にIBMが「オートノミックコンピューティング」として提唱し、当時のHPでも同様のコンセプトに取り組んでいたりもしたが、この頃はまだ現在ほどAI技術が成熟していなかったこともあり、その時点で具体的な成果が得られたわけではなかった。それから15年以上が経過した今、ようやくコンセプトを実現するためのピースがそろいつつあるという状況になったようだ。データ収集に時間を要するとしても、数年後にはITインフラ全体に渡って自律的な運用が可能になっていることも期待できそうだ。

HPE Cloud Volumesの概要(HPE資料より)

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