矢野経済研究所は3月16日、国内のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査の結果を発表した。これによると、2017年の同市場規模は前年比33.3%増の2400億円(事業者売上高ベース)と、引き続き大きく成長したことが分かった。
矢野経済研究所によると、既存システムのクラウドへの「リフト&シフト」が市場を牽引し、クラウド基盤サービス市場は順調に伸長を続けている。さらに近年は、業務特性に合わせた利用方法としてハイブリッドクラウドやマルチクラウドの活用が増加している。その背景として、ユーザー企業が複数のクラウドサービスを使い分けてベンダーロックインを回避することや、クラウドベンダー各社によるPaaSの機能差異化に伴ってシステムの価値が向上したことなどを挙げている。
また、クラウド基盤サービス市場の拡大を後押しする動きの一つとして、2017年1月に大手金融グループがAmazon Web Services(AWS)の採用を発表したことを指摘する。この影響もあり、これまでパブリッククラウドの採用に消極的であった金融業が積極的な活用を始めている。さらに、この動きが他の業種にも波及しているという。そのため2018年の同市場(同ベース)は、前年比29.2%増の3100億円に達すると予測する。
今後、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)がPaaSを牽引する。エンタープライズ分野のシステム案件の増加に伴って案件自体の大規模化・長期化が進むと考える。こうした動きからクラウド基盤サービス市場は今後も高成長を維持し、2021年の同市場規模は6500億円に達すると予測する。
クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所推計)
※事業者売上高ベース
※市場規模にSaaS(Software as a Service)を含まない
※表中のCAGRは2015年から当該年までの年平均成長率
同調査で実施した法人アンケート調査では、パブリッククラウドを「導入検討中」と回答した34社のうち、検討中のサービスとして「Microsoft Azure」を挙げた企業が12社と最も多く、全体の35.3%を占めた。これにAWSの「Amazon EC2」の8社(23.5%)、富士通の「K5」の4社(11.8%)が続いた。
Microsoft Azureは2014年に国内データセンターを開設して以降、衰えることなく高成長を続けている。その一因はエンタープライズ用途における高い信頼にあると、同社では考えている。一方、パブリッククラウドでは既にAWSを利用しているユーザー企業が多い。新規導入の際には必ず候補として名前が挙がるなど、認知度の高さを強みにユーザーを増やしていくとみている。
しかし、今後基幹系システムをパブリッククラウドに「リフト&シフト」するケースも増えていく中でMicrosoft Azureが同アンケート結果同様にユーザーを増やし続ければ、両者の売上高シェアが逆転する可能性もあると指摘する。
導入検討中のパブリッククラウド上位3サービス(出典:矢野経済研究所推計)
アンケート調査期間:2017年7月~8月、調査(集計)対象:国内民間企業および公的団体・機関などの法人517社のうちパブリッククラウドについて「導入検討中」と回答した34社、調査方法:郵送によるアンケート調査、複数回答、回答数の多い上位3サービスを抜粋