Amazon Web Services(AWS)にとって、「Sumerian」は大きな賭けだ。このサービスは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)のアプリケーションが、今後ウェブブラウザと「WebXR」と呼ばれる新しい標準で実行されるようになることを前提としている。
企業はまだ、HTCの「VIVE」やFacebookの「Oculus」などの既存のVRプラットフォームを利用するのに必要なスキルを持っていない。「Unity」などの3Dレンダリングやゲームに適したツールもあるが、企業がその投資に見合うだけの応用事例を見つけられるかどうかは不透明だ。
AWSは、Sumerianと開発手順を単純化したインターフェースによって、企業での利用事例を増やそうとしている。2017年の「re:Invent」でお披露目されたSumerianには、AWSの音声プラットフォーム「Polly」や、「Alexa」でも使われている対話型インターフェースエンジン「Lex」が統合されている。
米ニューヨーク市にあるAWSのLoftで、ベータ版のSumerianを使ってみた数社の企業が、利用事例について説明した。これらの企業の説明に共通していたのは、Sumerianによるアプリの構築プロセスは、これまで使っていたほかのツールほど大変ではなく、必要なコストと開発時間が減ったため、VRやARの実験を簡単に行えるようになったという話だ。
AWSのAmazon Sumerian担当ゼネラルマネージャーKyle Roche氏が、Sumerianによって生まれつつある利用事例として挙げたのは、音声合成やコンピュータビジョンをはじめとするサービスを用いた、文脈を踏まえた体験を提供できるデジタルサイネージや「ホスト」だ。クルーズ旅行会社が、顧客と対話できるホストを利用しているところを想像してみてほしい。アプリケーションのトレーニング、あるいは教育にも利用できるかもしれない。
Roche氏は「ARによって編集を強化し、ウェブページからのシーンの利用を促そうとしている」と述べている。「ARとVRがブラウザで使えるようになれば、企業による利用事例も増えるはずだ」