IBM ResearchディレクターのArvind Krishna氏は、量子コンピュータの現状について「コンピューティングの歴史において、重要な時を迎えている。振り返ったとき、実用的な量子コンピュータの始まりとして記憶されるだろう」と話している。
IBMは先日の自社イベントにおいて、量子コンピュータ「IBM Q」を展示した。Qと書いてある中央下の筒の中に、爪の先ほどのチップが入っており、それがコンピュータの実態だ。それ以外の、クラゲのように見える全体像のほとんどは冷却のためのもの。外宇宙よりも低い絶対零度を維持するという。これにより量子状態を安定させ、操り、さらに読み出すという処理を実施する。
量子コンピューティングの基になっている量子力学理論は、原子、分子、電子など微小な世界で起こる現象を説明するもの。通常のコンピュータが0か1かを徹底的に区別することで成立するものであるのに対し、量子コンピューティングでは0と1の両方の状態を保持できるという。
2つの輪を1つの玉が同時にくぐることができる、などと説明されることもあり、イメージしづらい世界でもある。
量子コンピューティングの方式として有名なアニーリング方式。さまざまな形をした複数の積み木を箱に入れる際に、従来の方法では、うまくいかなければ後戻りしてやり直す。一方で、アニーリング方式では、全体を揺らして落ち着かせることで、箱の中に収めてしまう理論(Fujitsu Journal)と説明される。やり直しがないことで、よりすばやい処理が可能になる。
処理性能でムーアの法則の限界を打ち破り、やがては脳型コンピュータの世界をも見据える量子コンピュータの動きには、今後ますます目が離せなくなりそうだ。