福岡造船は、富士通および富士通マーケティングと共同で船舶部品の管理システムを開発、4月に運用を始めた。現場作業員が拡張現実(AR)技術を使って各部品の種類や取り付け位置などを確かめられるようにした。造船事業の生産性向上を図る。
福岡造船では、年間約8隻の化学薬品タンカーを建造し、1隻当たり約1万5000点に及ぶ配管部品の組み立てを行っている。日々、複数の外注業者から数多くの部品が届けられ、現場作業員は大量の紙の設計図面を見ながら、広大な資材置き場に置かれた部品を見つけている。そのため、図面との照らし合わせの負担や部品の選択ミス、置き場不明による混乱など、現場での作業工程における効率化が課題となっていた。
こうした課題に対し、国土交通省が推進する海事生産性革命(i-Shipping)で、「ARマーカーを用いた船舶部品情報の活用技術の開発」をテーマとした福岡造船の提案が採択された。それに伴い、富士通の製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェア「FUJITSU Manufacturing Industry Solution PLEMIA Maintenance Viewer」を用いて、AR対応の船舶部品管理システムを共同開発した。
新たに開発したシステムでは、配管部品にARマーカーを貼り付ける。現場作業員がマーカーをタブレットで読み取って、各部品の種類や取り付け位置などを速やかに確かめられる。また、配管を製造する外注業者も納品予定の部品をシステムで管理するようにした。それにより、福岡造船は外注業者の部品の製造状況や納品状況を一括で把握できる。
左から配管部品に貼り付けられたARマーカーとタブレットでスキャンされた画面イメージ(出典:富士通)
これまで現場作業員が紙書類で行っていた部品ごとの図面の確認や、広大な資材置き場に置かれている部品の追跡が容易になるほか、造船の製造工程に合わせたタイミングで外注業者へ納品依頼をすることなどが可能になるという。福岡造船では、新システムの導入で外注業者による配管製造から造船への配管取り付けまでの作業工数を約35%削減することを目標とする。
今後は、製造現場のシステム運用で実績を重ねるとともに、現場の取り付け作業を視覚的に支援するなど、AR技術の特徴を生かしたシステム開発を富士通と共同で進め、さらなる生産性の向上を目指す。