企業セキュリティの歩き方

セキュリティ人材論--「氷河期」が常態化した日本社会の現実

武田一城 (ラック) 2018年04月17日 06時00分

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 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティを向上させていくための視点やヒントを提示する。

空前の人材売り手市場

 前回まで「セキュリティ人材の末路」と題して、ITとセキュリティを取り巻く人材の現状を考察してきた。今回からは業界全体での人材の流動性などを含むもう少し高い視点から人材論の行く末について考えてみたい。

 筆者は1998年3月に大学を卒業した。当時の就職活動のトピックとしては、山一證券や北海道拓殖銀行の破綻などがあり、就職氷河期を越えた「超氷河期」と呼ばれる時代だった。いわゆるロスジェネなどと言われる年代である。しかし、その5~6年前までのバブル期は企業の大量採用が続き、その世代と筆者の世代の就職を取り巻く環境の差はすごいものだった。バブル期には「就職戦線異常なし(1991年公開)」という映画があったが、それを鑑賞した際に、これが同じ国でほんの数年前に起きたことなのかと非常に驚いたものだ。

 しかもその後、そのような状況は長期化・常態化してしまった。いまの40代半ば以降のほとんどの方々は、リーマンショック前の数年間などの例外的な好況期を除いて、程度の差はあってもほとんど厳冬期に等しい状況であり、就職に苦労した人ばかりだろう。筆者は幸いにもとあるシステムベンダーにすべり込み、幸運と分を乗り越えつつ何度か移籍もしながらなんとか食いつないで来られた。IT業界に来たことに後悔はしていないものの、この業界に入ることになった理由の大部分は人材需要が高い業界だったことに他ならない。具体的には、就職活動当時に唯一IT業界が「2000年問題」への対応で、それなりに求人が活況していたのである。

 しかし、ここ数年はバブル期を上回るほどの「空前の売り手市場」という見出しの記事がメディアなどで見られ、内定率や有効求人倍率などの統計的な数値の高さがそれを裏付けている。その背景には、団塊世代のリタイアや就職氷河期に新卒採用を絞った企業の若年~中堅層の割合の減少がある。なお、長期的な低出生率による新卒学生の減少傾向も今後拡大するなど問題の根本の部分はより複雑になっている。どれも短期的に解決しそうな課題ではないし、長期的な傾向として今後常態化してしまうことが予想される。

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