常態化した人材不足とその対策
2018年1月に厚生労働省が発表した2017年の有効求人倍率は1.59倍で、高度経済成長期の1974年1月以来44年ぶりの高水準だ。総務省が発表した完全失業率も24年ぶりの低い水準になっている。現在はバブル期や高度経済成長期に負けないほどの人材不足で新卒も中途採用も人材の取り合いになっていることが分かる。
さらに職業別で見ていくと、より深刻な状況が分かる。例えば、建築・土木・測量技術者などの有効求人倍率は5.07倍で、人材不足による建築現場での工期の遅れなどが散見されるという。その他にも、介護サービスなどは3.57倍、運輸・郵便事務では3. 51倍とあるように人手不足が深刻だ。ついには、人手不足が原因で倒産するケースまで発生しているという。人口減少時代に突入した日本において、この人材不足は今後より深刻になっていくだろう。
その中でも最も厳しいのは警備員などの保安業である。2016年の有効求人倍率はなんと7.23倍だ。この業界の有効求人倍率は5年ほど5倍を超える状況が続き、瞬間では最大99.6倍という、とても求人倍率とはとても思えないレベルの値を記録している。この数値は東京でのことで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの関連施設の建設ラッシュによる影響であるらしい。もちろん本番の時には、世界中のトップアスリートや各国の重要人物が多数来日する。その時には、この状況がさらに深刻になることは確実だ。
求人と求職のミスマッチ
それでも、このような人材不足の状況にもかかわらず、職種別に見た場合、求人倍率が0.73倍の会計事務や0.35倍の一般事務といった、求職者数が求人数を大きく上回るものがいくつか存在する。
これは、団塊世代のリタイアや景況感の好転によって全体の求人は増えたものの、求職者側に選択する余地が多く生まれ、その結果、人気職種に集中してしまったということを示していると思われる。ただし、そのような人気職種はITの進歩や人工知能(AI)などの活用で必要性がどんどん低下していくと言う専門家や研究者も少なくない。そのため、今後もこのような求人と求職のミスマッチが解消することは考えにくく、人気の無い職業の人手不足は常態化してしまうだろう。
主な職業の有効求人倍率(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」、2017年)