海外コメンタリー

ブロックチェーンは「妖精の粉」ではない--暗号の権威が注ぐ厳しい視線 - (page 2)

John Fontana (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-05-02 06:45

 Marlinspike氏は、ブロックチェーン技術が有する分散型の性質には価値が見いだせるが、問題は分散していることに価値がある利用法が多くないことだと語った。同氏は「消費者はそこに価値を見ていない」と付け加え、ブロックチェーンは2000年代初めのピアツーピア技術に対する熱狂を思い出させると話した。「当時は熱狂的で、素晴らしいことについて語る人が多くいたが、あれはあまり健全ではなかった」と同氏は言う。

 さらに同氏は、ソーシャルメディアに対しても同様の感触を持っており、2017年にはソーシャルメディアに対する大きな幻滅が起こったと述べている。「世界を繋ぎ、情報を組織化するというユートピア的な物語は終わりに近づいている」と同氏は言う。さらに、「あらゆる文脈や政治的スペクトルで、ソーシャル技術が明るい、よりよい未来をもたらすための希望に満ちたツールであるという見方は弱まっており、誰もがソーシャルメディアを間違った者の手に渡った武器のように考え始めている」述べ、このことは社会や(RSAの)人々が進めていることや、プライバシーや暗号の世界の人間が考えていることにも直接的な影響を与えると主張した。

 ディスカッションでは、セキュリティの費用が増え続けていることに対する業界の強迫観念についても議論になった。

 Kocher氏は、「これまでプロセッサやOS、コンパイラ、開発手法などはすべて、速さを最優先にしており、セキュリティは二次的な目標だった」と語った。「しかしわれわれは、これまで下してきた選択を再考する必要がある」

 同氏は、この問題について、文化的な変化を生み出そうとしているという。「問題の経済的な重要性が変わってきた。セキュリティは数兆ドル規模の問題になっている。それに比べれば、パフォーマンスの向上で得られる価値は誤差の範囲だ。技術に対する見方を根本的に変える必要がある」(Kocher氏)

 同氏はまた、大規模なデータセットがあれば興味深い知見が明らかになる可能性があるが、すべてのデータを1カ所に集めることの本質的なリスクについても認識する必要があると語った。同氏は「企業レベルで行う場合はトレードオフを把握できるが、国家レベルでやるとなるとかなり恐ろしい」と述べている。

 また締めくくりには、Marlinspike氏が議論を振り返って明るい話題はあるかと問われ、プライバシーや暗号の話題は、自分たちの小さな情報の断片を守ることから、望ましい世界のインフラを構築する話のようになってきているように感じられると答えた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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