Gartnerによれば、ブロックチェーンのビジネスに対する付加価値は、2025年までに1760億ドル(約20兆円)強まで増加し、2030年には3兆1000億ドル(約340兆円)を超えるという。一方で同社は、2025年までは、ブロックチェーンから大きな利益が得られるとは見ていない。
Gartnerは、現在のブロックチェーンの利用法のほとんどは破壊的影響を及ぼすものでないとしており、その理由として「ブロックチェーン関連のプロジェクトを進めている企業の大多数は、(ビジネスモデルとテクノロジプラットフォームの両面で)従来の、集中型モデルに当てはまらないシステムを発想するのに困難を感じている」と述べている。一方で別のGartnerの調査によると、ビジネスリーダーの66%がブロックチェーンはビジネスに破壊的な影響を及ぼす技術だと考えており、相応の予算を割り当てているという。さらに調査対象の5%は、ブロックチェーンに1000万ドル(約10億円)以上支出する予定があると回答している。しかし、Gartnerが98カ国、3000人のCIOを対象に実施した2018年版の「CIO Survey」では、「組織に何らかの形のブロックチェーン技術を導入したと回答したCIOは1%しかいなかった」ことが明らかになった。
IDCによれば、2017年のブロックチェーンソリューションに対する世界的な支出は9億4500万ドル(約1000億円)だったが、2018年には2倍以上の21億ドル(約2300億円)に増えると予想されるという。同社は、2016~2021年の予測期間中に、ブロックチェーンに対する支出は着実に増加すると見込んでいる。同社が予想する5年間の年平均成長率(CAGR)は81.2%で、2021年の総支出額は97億ドル(約1兆円)に達すると見ている。「ブロックチェーンに対する投資額がもっとも大きいのは米国で、予測期間の世界的な支出の40%以上を米国が占めるとみられる。次にブロックチェーンに対する支出が大きい地域は西欧で、それに中国と、中国と日本を除くアジア太平洋地域が続く。本ガイドで扱った9地域すべてで、2016〜2021年の予測期間を通じて驚異的な成長が見られると予想され、中南米と日本が、それぞれ年平均成長率152.5%と127.3%で他地域よりも先行するだろう」とIDCは述べている。
ブロックチェーンに対する支出がもっとも多い部門は金融部門で(2018年の予想支出額は7億5400万ドル)、これは主に銀行業界での急速な普及によるものだ。流通・サービス部門(2018年の予想支出額は5億1000万ドル)では、小売業界とプロフェッショナルサービス業界で盛んに投資が行われ、製造・資源部門(2018年の予想支出額は4億4800万ドル)では、ディスクリート製造業およびプロセス製造業が投資の中心となると予想されている。米国では、ブロックチェーンに対する投資がもっとも大きい部門は、流通・サービス部門になる見込みだ。一方、西欧、中国、中国・日本を除くアジア太平洋地域では、金融サービス部門が支出を促す。ブロックチェーンに対する支出の増加率がもっとも高い業界は、プロフェッショナルサービス(年平均成長率85.8%)、ディスクリート製造業(年平均成長率84.3%)、資源産業(年平均成長率83.9%)だ。(IDC)
Venture Scannerによれば、本稿掲載時点でブロックチェーンを扱うスタートアップは現在1000社超存在し、75カ国以上の300を超える企業に、60億ドル以上(約6600億円)のベンチャーキャピタルが投資されている。
筆者は、業界ごとのブロックチェーンの状況や、普及を加速する要因、企業にとってのメリットや課題などに対するベンチャーキャピタル業界の視点について知るために、ブロックチェーンをはじめとする新技術に力を入れている、ボストンでも有数のベンチャーキャピタル企業とコンタクトを取った。
Michael Skok氏は、Underscore VCの共同設立者であると同時に、ハーバードビジネススクールのベンチャーパートナーを務めている。Skok氏は20年以上に渡って複数の事業を立ち上げた起業家であり、投資家に転じてからも10年以上のキャリアを持っている。また今では、メンタリングを行いつつ、起業について常に学び、教えている。
Michael Skok氏