ITリーダーの役割は組織のデジタル変革を支援することだ。しかし多くの企業は、破壊的変革の脅威によって、不利な状況に陥っていると感じている。また一部の最高情報責任者(CIO)は、テクノロジ関連の意思決定に対する自らの影響力が縮小していると感じ始めている。
これが、人材紹介会社Harvey Nashとコンサルティング会社KPMGが実施した調査「2018 CIO Survey」の結論の1つだ。またこの調査では、デジタルプラットフォームへの移行が、ITリーダーにとって大きな課題になっていることが明らかになった。従来型の企業がデジタル時代の市場で新たなルートを開拓するには、デジタルプラットフォームが必要不可欠だ。
しかし企業の4分の3以上(78%)は、自分の会社のデジタル戦略の効果は、よくて中程度だと答えている。また10社に1社近く(9%)は、デジタル化に関する明確なビジョンや戦略をまったく持っていないと述べている。さらに、デジタル化に対する投資の多くは、業務の根幹に関わるアクティビティではなく、フロントエンドに重点が置かれている。
重要な領域でデジタル変革が進展していないことで、企業は失望しており、これがCIOの権限が弱まる原因になる可能性がある。企業の半数以上(55%)は、IT部門と事業部門の連携は「中程度」かそれ以下だと評価している。
Harvey Nashの最高経営責任者(CEO)Albert Ellis氏は「企業は市場の破壊的変革により混乱に陥りつつあり、一部のCIOは変化の大きさに戸惑っている」と述べている。また同氏は、より憂慮すべきトレンドとして、破壊的変革への対応の失敗が、CIOの影響力の低下を引き起こしていると見ている。
取締役会に席を持つCIOの数は減っており、前年に比べ9%減少している。また、自らの影響力が高まっていると答えたITリーダーの数も減っており、前年比で8%減少した。さらに「非常に満足」していると感じているCIOの数も13%減っている。
CIOの新たな役割
ITリーダーは、変革の遅れと、事業部門に対する影響力の低下が同時に起こっていることに危機感を感じるかもしれない。しかしEllis氏は、文脈を考慮すべきだと述べている。同氏によれば、多くのCIOは直属の上司が誰かによって自分の影響力を判断しているという。CIOは一般にCEOの直属になることを望むが、必ずしもそれがかなわない場合もある。
また、多くのCIOは取締役会に席を持っていないが、その一方で、事業部門のテクノロジに対する関心はこれまで以上に高まっている。その証拠に、企業役員のうち実に84%が、自分の会社の2018年のIT予算は前年と同じか、増加する見込みだと答えている。