SAPが日本で大手企業のイノベーションを支援するための活動拠点を設置する。その具体的な支援の手立てとなるのが、「デザインシンキング(デザイン思考)」だ。新たな拠点の設置によって、同社は日本でデザインシンキング旋風を巻き起こそうと目論んでいるようだ。
SAPが東京・大手町にイノベーション支援拠点を設置へ
会見に臨むSAPジャパンの内田士郎 代表取締役会長
「SAPが米シリコンバレーで展開しているイノベーションを支援する取り組みの全てをここに持ち込みたい」――。SAPジャパンの内田士郎会長は、同社と三菱地所が共同で行った新たな施設開設の会見でこう力を込めた。同氏が「ここ」と表現したのは、三菱地所が大規模リノベーションを進める東京・大手町ビルの6階に、SAPジャパンが11月に開設する予定の「TechLab」(仮称)のことである。同社ではこの施設を「ビジネスイノベーションスペース」と呼んでいる。
TechLabの発表内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは内田氏が会見で説明したSAPによるイノベーション支援の取り組みについて記しておこう。
同氏は日本でのイノベーション創出における課題として、図1のように「People」「Process」「Place」といった3つの「P」を挙げた。
図1:日本国内でのイノベーション創出における課題〜3つの「P」とは
Peopleは「同質から抜け出す」あるいは「“異邦人”と交わる」のがキーポイントで、SAPジャパンが日本独自の取り組みとして3月に発表した「Business Innovators Network」と呼ぶコミュニティーを指す。このコミュニティーについては、2018年3月22日掲載の本コラム連載「SAPにみる『デジタルエコシステム躍動の決め手』」で解説しているのでご参照いただきたい。
Processは「共通言語」あるいは「フレームワーク」がキーポイントで、すなわちデザインシンキングである。Placeは「出島」あるいは「創造性を高める環境」がキーポイントで、内田氏の冒頭の言葉にあるように、シリコンバレーのSAPの拠点、そして今回のTechLabを指す。