アシストスーツという技術は、明確な顧客像を描き出せないまま約10年の時がたったものの、ついに従来の製造分野や建築分野で市場を作り出そうとしている。
Ford MotorがEkso Bionicsに75着のアシストスーツを発注した。この報道を受け、ロボット外骨格が再び脚光を浴びるようになっている。
今回の発注台数は比較的少ないとはいえ、これまで10年以上も有望な市場を探し求めてきた極めて先進的なテクノロジにとって、このニュースはとても大きな意義を持っている。人間の力を増大させるウェアラブルロボットには多額の投資が行われてきているが、そのユースケースとして具体例を挙げにくい状況が続いていた。
Fordによる今回の発注は、「EksoVest」の試用が好成績を収めたことを受けて実施された。EksoVestは、製造業界や、作業員が大型工具などの重量物を持ち上げる必要のある業界をターゲットに据えたEksoの新製品だ。同社は、従業員の疲労を軽減し、けがを減らせるという点をアピールしている。
Fordが抱いた興味の中心には、多くの製造業界における変わらぬ現実がある。つまり、自動化によってさまざまな変化がもたらされているものの、プロセスの中心には依然として人間がいるという現実だ。
Eksoは外骨格製造という市場において、実質的に初の企業と言えるため、同市場全体を先導していく存在となるはずだ。
カリフォルニア大学バークレー校の卒業研究に端を発し、2005年に設立された同社は当初、運動機能支援分野の企業を目指していた。共同創業者であるRuss Angold氏とNathan Harding氏は、運動機能に障害を持つ人々が同社のスーツを洋服の下に着用することで、飛行機内の狭い通路を歩けるようになる日がくるという素晴らしい目標をアピールしていた。
その目標は賞賛に値するが、市場の現実を前にして、彼らのビジョンはより控えめなものとなった。車椅子という、信頼性があり、至るところで利用されており、世界中に普及するほどの手頃な価格のテクノロジには太刀打ちできないと分かったのだ。当時、同社の外骨格の価格は優に10万ドルを超えていた。
その後、同社はリハビリテーション市場に狙いを定め、限定的ながら成功を収めている。同社の製品はリハビリテーション診療所において、脊髄損傷や脳梗塞からの回復を目指す患者の歩行訓練やその他の理学療法に用いられている。
しかし、リハビリテーション関連は新興企業にとって参入が難しい分野だ。同社の製品を利用してもらうには、理学療法士の訓練が必要となる点も普及の足かせとなっている。また、こうした治療に関する保険にまつわる問題も出てくる。
同社はリハビリテーション分野での操業のために多額の投資を余儀なくされ、その経費は著しく上昇することになった。