個人情報保護委員会は、保護と同時に匿名加工化などを通じたビジネス活用が期待されている個人データを取り巻く実態調査「匿名加工情報・個人情報の適正な利活用の在り方に関する動向調査(PDF)」の結果を公表した。
2017年5月の個人情報保護法の改正では、個人情報を含む「個人データ」の安全性を確保しつつ、その効果的な活用がビジネスの創出や活性化につながるとして新たに「匿名加工情報制度」が導入された。調査は、個人情報や匿名加工情報の利用実態の把握と、個人情報保護法に沿った適切な個人データの利用や活用の支援を目的として、三菱総合研究所が2018年3月に実施した。
調査では、個人情報の保護や匿名加工への取り組みと第三者提供に関して、認定個人情報保護団体や主要業種(小売、クレジットカード、医療、介護、IT)の事業者へのインタビューを行い、事例(PDF)を作成。また、事業者における実態把握として「IoT推進コンソーシアム」参加企業にアンケートを行い、個人データの利用や活用に関する状況をまとめている(有効回答207件)。
なお、アンケートについては個人データを「個人情報」「匿名加工情報」「統計情報」として扱った。特定分野の企業を対象にしたため、回答企業の45%が情報通信業、22.5%が製造業であるなど、結果に偏りがあることを留意点に挙げている。
まず個人データの利用や活用では、約25%が既に行っていると回答し、検討中を加えると半数近くに上ることが分かった。「統計情報」が最も多く使われていたが、調査研究や商品・サービス開発を目的とするケースでは「匿名加工情報」、マーケティングを目的とするケースでは「個人情報」を多く利用している傾向が見られた。また利用されるデータの種類では、「購買履歴」と「ウェブ閲覧履歴」が多く挙げられた。
パーソナルデータの種類と利用形態(出典:「匿名加工情報・個人情報の適正な利活用の在り方に関する動向調査」)
第三者に提供されているデータでは、「購買履歴」「位置情報」「ウェブ閲覧情報」が挙げられ、「購買履歴」と「ウェブ閲覧情報」は提供する側、提供される側の双方で多かった。一方、位置情報は提供する側が多いとしたのに対し、提供される側は少ないことが分かった。今後の提供が検討されているデータでは「テレビの視聴情報」が挙げられたものの、提供される側のニーズは低かった。
個人データの提供方法について、提供する側では「個人情報の共同利用」が目立っており、複数の事業者がアライアンスを組んで個人情報の取得と共同利用によるサービスの提供を構想している様子がうかがえるという。提供される側では、個人情報の第三者提供が最多だった。具体的なケースとしては、「情報通信業から広告業への提供」「百貨店・量販店から情報通信業への提供」などがある。
パーソナルデータの提供方法(出典:「匿名加工情報・個人情報の適正な利活用の在り方に関する動向調査」)
匿名加工情報を提供される側での匿名加工情報を利用・活用するメリットには、情報漏えいリスクの軽減、本人同意が不要などの手続きの簡略化などが挙げられた。一方、課題には「匿名加工情報についてよく知らない」や「利用方法が分からない」といった回答が多く挙げられた。匿名加工情報を利用していない事業者には、情報を利用することによる社会からの信用や評判への影響を懸念する向きがあり、事例の認知や理解が深まることで、匿名加工情報の利用や活用の広がりが期待されると分析している。