オックスフォード大学のReuters Institute for the Study of Journalism(RISJ)が、欧州の200のニュースサイトを対象として実施した調査で、これらのサイトでは、一般データ保護規則(GDPR)の施行前の4月に比べて、施行後の7月には、サードパーティーによるトラッキングのためのCookieの利用が22%減少したことが明らかになった。
Cookieの利用が減少した原因がGDPRだと証明されたわけではないが、GDPRによって利用者の同意が必要になった各サイトが、利用しているCookieについて見直しを行った可能性はある。レポートでは、「GDPRの施行は、報道機関がサードパーティーのサービスを含むさまざまな機能の有効性を再評価し、あまり使われなくなったコードや、ユーザーのプライバシーを侵害するコードを削除するきっかけになった可能性がある」と説明されている。

RISJのレポートによれば、サードパーティーによるトラッキング用Cookieの利用は、欧州の6カ国では減少しており、ポーランドでは増加している。
RISJが作成したグラフを見れば分かるとおり、調査対象となった7カ国(フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、英国)の現状にはかなりのばらつきが見られる。英国のサイトではCookieの数が45%減少したが、ドイツでは6%しか減っていない。またスペイン、フランス、イタリアでは、30%以上の減少が見られた。一方、ポーランドでは20%増加している。
ただし米国のIT企業は、一般にあまり間引きの対象になっていない。ほとんどのニュースサイトでは、Google(96%)、Facebook(70%)、Amazon(57%)のCookieをそのまま残している。FacebookのCookieは3カ月前の75%から5%減少したが、FacebookはGDPRよりも大きな問題を抱えており、こちらが原因となっている可能性もある。
ほとんどのニュースサイトは、Googleが提供するサービスのCookieを複数利用しており、そのトップ5は、DoubleClick(87%のサイトで利用)、Google Analytics(86%)、Google Tag Manager(80%)、AdSense(72%)、Google API(69%)だった。

RISJのレポートに収録されていた表によれば、AdSense以外のGoogle関連企業のトラッキング用Cookieはほとんど減っていない。
またレポートでは、デザインを最適化するためのCookieが27%、広告・マーケッティング用のCookieが14%、ソーシャルメディアのCookieが9%減少したことも明らかになった。
レポートの著者らは、オープンソースのツールである「webXray」を使用して2018年4月時点と7月時点のCookieの数を調査した。著者らは、一部のサイトはこのツールをブロックしていた可能性があり、「ページで使用されている実際の(サードパーティーCookieの)数は、この数字よりも大きいかもしれない」と認めている。
ただしこのツールでは、トラッキング用のCookieをブロックしたユーザーがどれだけいたかという、重要な問いには答えられない。GDPRが施行されたことで、Cookieの利用に対して包括的な同意を得ることは(少なくとも合法に行うことは)難しくなった。同意を拒否するユーザーが多ければ、トラッキング用のCookieの価値は下がる。その結果、ウェブサイトが価値の低いCookieの利用を取りやめる可能性もある。
この調査で明らかになった減少傾向が、長期的なトレンドなのか、一時的なものかはまだ分からない。次回のRISJの調査ではさらに減少するかもしれないし、トラッキング業界がこの問題への対処方法を見つけられれば、回復するかもしれない。
いずれにせよ、ウェブサイトを運営しているあらゆる企業は、この問題に注意を払い、必要に応じて対応する準備を整えておくべきだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。