VMware最大のプライベートイベントである「VMworld 2018」が8月27~29日(現地時間)の3日間、米ネバダ州ラスベガスのマンダレイベイコンベンションセンターで開催されている。
1998年創業のVMwareは、2018年でちょうど20周年の節目を迎えている。VMworldも今回で15回目の開催だ。また、日本法人のヴイエムウェアは、2003年の設立から15年目を迎えるという節目が重なるタイミングでの開催となった。
VMworld 2018への参加者は全世界2万人以上となり、日本からも過去最高となる約380人が参加。「Possible Begins with You」をテーマとし、Possibleの部分に「Success」「Choice」「VMworld」といった言葉を入れ替えてメッセージ性を高めた。
VMwareのPat Gelsinger CEO
会期初日(27日)の基調講演では「Technology Superpowers」をテーマに、VMware 最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏と最高技術責任者(CTO)のRay O'Farrell氏が登壇。VMwareの最新技術とともに、破壊的なテクノロジによってもたらされる新たなデジタル世界を提示する内容となった。
Gelsinger氏はまず、「初期のVMwareは、ESXによって林立するITイノベーションを橋渡しするところから始まった。BYODの進展によるマルチデバイス環境においても、Work Space OneによってVMwareは橋渡しの役割を果たしている。ネットワークについても、NSXによって橋渡しの役割を担った。そして、クラウドの世界においても、パブリックとプライベートをつなげる役割を果たしている。これからは、人と利益のどちらを優先しなくてはならないかという議論についても、どちらも両立できる橋渡しを行うことになる」と、これまでの20年間のVMwareの役割が「橋渡し」にあることを強調。
「過去20年間にわたって、VMwareの中心にいるのはコミュニティーである。VMwareがブレイクスルーのイノベーションを作り、それを活用してコミュニティーの皆さんが驚くべきことをしてくれる。20年間の成長の原動力はそこにある」と切り出し、「VMwareは、20歳の誕生日を迎えたが、米国ではまだお酒は飲めない年齢。来年からは、いよいよお酒も飲めるようになる」と語って会場を沸かせたほか、「私の次のコミットメント」として「VMware」のロゴのタトゥーを左腕に入れたことをシャツをまくり上げて披露した。
今回の基調講演では、VMwareがビジョンとして掲げている「ANY CLOUD」「ANY APPLICATION」「ANY DEVICE」「セキュリティ」に関して、新たな製品やサービス、提携強化などを相次いで発表した。
その中でも大きな発表になったのが、「Amazon Relational Database Service(RDS) on VMware」だ。
AWSのAndy Jassy CEO
Amazon Web Services(AWS)のAndy Jassy CEOが登壇し、AWSのアジア太平洋地域(シドニー)リージョンで、VMware Cloud on AWSの提供を開始したことを発表。「シドニーでも利用できるようになったことで、米国、欧州、アジア太平洋地域の全地域で利用できる。既にVMware Cloud on AWSはさまざまな業種で利用されており、四半期ごとに2倍の成長を遂げている。マサチューセッツ工科大学(MIT)では、3000のVM(仮想マシン)をAWS上に移行し、しかも移行を3カ月で完了させた。2019年末までに、AWS GovCloudやAWSのサービスを全地域で利用できるようにする。VMwareで慣れ親しんだオンプレミスの環境を、クラウドでも利用できることができ、プライバシーやセキュリティの要件も満たしており、ゲームチェンジャーになると考えている」と述べる一方、「間もなくNSXの全ての機能とDirect Connect、VMware PKSなどを提供できる」とした。また、2019年第2四半期にAWSの大阪リージョンで展開予定であることも資料の中で示した。
そして、新たなサービスとしてAmazon RDS on VMwareを発表。「RDSは10万の顧客が利用しているリレーショナルデータベース(RDB)であり、多くの企業がハイブリッドモードで活用している。簡単にデータベースをオンプレミスで管理できないかという要望があり、これに応えたものである。RDSの優れた機能を、VMwareの顧客に提供できるようになる」とした。
もう一つ注目を集めたのが、ESXiにおいて64ビットARM for Edgeへの対応を発表したことだ。O'Farrell氏は、マルチデバイスを管理できるVMware Workplace Oneのデモストレーションにおいて、風力発電のタービンに搭載されたセンサで収集したさまざまな情報をエッジ環境で管理するモノのインターネット(IoT)の様子を示し、「これが64ビットARMで動作している。仮想化環境によって、エッジの機能を停止することなくソフトウェアのアップデートが可能になる。ESXiをARMプラットフォーム上に持ってくることができた」などとした。
VMwareのRay O'Farrell CTO
同社では、特定の組み込みOEMと協力して、焦点を絞った形でARM対応製品を提供していくことになるという。
基調講演では、O'Farrell氏が同社の社員とともに、いくつかのデモストレーションを行った。その中で、VMware Cloud FoundationとVMware Cloud管理サービスを組み合わせ、VMwareが運営するエンドツーエンドサービスとしてSDDC(Software-Defined Data Center)インフラストラクチャを提供する「Project Dimension」や、機械学習に基づいて自己運転型データセンターの構築を可能にする「Project Magna」、ブロックチェーン技術を活用してエンタープライズ向け分散型インフラストラクチャを実現するオープンソースの「Project Concord」などを発表。
Project Magnaの説明では、「AI(人工知能)や機械学習を組み合わせることで、データセンターのオペレーションを変えることができる。これは車の自動運転と同じく、データセンターを自動化するものになる。SDDCは、Software-Defined Data Centerの略称だが、今後は、Self-Driving Data Centerの意味を持つことになる」などと述べた。
さらに、VMware AppDefenseを統合した新たな「VMware vSphere Platinum」エディションを発表した。アプリケーション、インフラ、データ、アクセスを保護するシンプルかつ高機能な基盤となる。また、デジタルワークスペース全体にわたり、データをもとにしたインサイトの提供とプロセスの自動化を実現するクラウドサービス「Workspace ONE Intelligence」を発表。デルとの協業によるDell Provisioning for Workspace Oneを通じて、「すぐに仕事を始められるPC環境を提供できる」とも語った。
また、vSANに関しては、「VMware vSAN 6.7 Update 1」を発表するとともに、グローバル2000社の50%への採用をはじめ、1万5000社以上に導入され、500社以上のクラウドパートナーがいることに言及。VMware Cloud AssemblyやVMware Service Broker、VMware Code Streamで構成する「VMware Cloud Automation」によって、クラウド内のワークロードをより効果的に管理、保護、操作できるようになり、顧客の価値創造、ビジネスパフォーマンスの改善、リスクの低減が可能になることも紹介した。
Kurbernetesに関しては、エンタープライズ水準の機能を持つコンテナ管理ツール「VMware PKS」を提供することで、自由かつ効率的にアプリケーションを動作できるとし、Gelsinger氏は「VMware PKSは、もはやKurbernetesの標準になっている」と語るとともに、「VMware PKSは、Kurbernetesの“ダイヤルトーン”の役目を果たすことになる」と独特の言い回しで、その役割を表現してみせた。
さらに、NVIDIAとの協業では、高度な仮想デスクトップ基盤(VDI)のワークロードを稼働させる環境を提供していることなどを紹介。また、マルチクラウド事業のグローバルプラットフォームであるCloudHealth Technologiesの買収を発表するなど、約1時間45分にわたる基調講演は、過去には例がないほど盛りだくさんの発表内容を含んだものとなった。
講演の最後にGelsinger氏は、「VMwareは過去20年間にわたってテクノロジの世界を変えてきた。Superpowerはますます進化し、企業がやらなくてはいけないことを支援することになる。私は30年間この業界にいるが、今ほどワクワクしていることはない。テクノロジによって人間の寿命を長くしたり、慢性的な病気をなくしたりできるだろう。そして、教育を全ての子どもに提供することもできる。こうした可能性を皆さんと一緒に実現したい」と呼び掛けて、講演を締めくくった。
(取材協力:ヴイエムウェア)