イタリアの電子政府は、欧州で最も先進的で住民に優しいエストニアの電子政府にははるかに及ばない。しかし、イタリア政府のデジタル変革チームは、市民と政府の関係性を改善するためにベストを尽くしている。
AmazonのシニアバイスプレジデントであるDiego Piacetini氏が率いるこのチームが編成されたのは、2年近く前のことだ。Piacetini氏はAmazonを休職してこの政府委員の仕事を引き受けた。
同チームの最新の成果は、これまでは別々にしか利用できなかった機能を一つにまとめたスマートフォンアプリ「IO」をリリースしたことだ。このアプリを使えば、税金を払うことも、公文書をスマートフォンに直接送らせることもできる。
このアプリはまだクローズドベータテストの段階であるため、オンラインストアからダウンロードすることはできず、現在はいくつかの自治体や政府の機関で試験的に運用されるにとどまっている。
同チームは取材に対して、「現段階でこのアプリを利用しているのは、Agenzia delle Entrate(歳入庁)、Agenzia entrate Riscossione(税務署)、Automobile Club d'Italia(ACI)、InfoCamere、ロンバルディア州、ミラノ市、ベルガモ市だ」と述べている。
ただし、ユーザー数はこの夏の間に増加する見込みであり、サービスの数や必要性が高い地域で、市民がベータテストに参加する予定だという。
5月にこのアプリがリリースされた際、Piacetini氏は「われわれは現在、アプリを完全に動作させるためのプラットフォームを整備している。このプラットフォームのコンポーネントは、必要最低限はそろっているが、まだ十分ではない」と述べている。
「ANPR(全居住人口登記簿)が実現すれば、現在は8000種類の登記簿に分散している全ての国民のデータを同期可能になる。また、『SPID』によって安全で統一的なアクセス手段が確保され、『PagoPA』の決済ノードがアプリのデジタルウォレットの機能を果たす」(Piacetini氏)
このシナリオが実現するには、このプラットフォームがスムーズに動作する状態にした上で、市民や企業を巻き込む必要あるが、そのどちらも成功の見込みが立っているわけではない。
例えば、全ての行政関係の支払いを行えるシステムである「PagoPA」が利用可能になったのは2013年のことだが、ごく最近までほとんど使われていなかった。
Piacetini氏自身が、ブログ記事で「2013年から2016年末までの間にあったトランザクションの件数は80万件以下に過ぎない。これに対し、同じ期間に税金の支払いや行政サービスに対する料金支払いは数億件発生している」と書いている。状況は改善されているものの、まだ満足できる状況にはほど遠い。