海外コメンタリー

ハリウッドにもオープンソースの波

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-09-14 06:30

 映画史上もっとも有名な200本ほどの映画のうち、多数が視覚効果を多用したものか、アニメーションのどちらかだという。そしてこれらの人気映画の多くには、オープンソースソフトウェアで作られたという共通点がある。

 Joint Technology Committee on Virtual ProductionのチェアマンDavid Morin氏は、The Linux Foundationがカナダのバンクーバーで開催した「Open Source Summit」でそう語った。The Linux Foundationは、映画制作会社がオープンソースを利用しやすい環境を作るため、映画芸術科学アカデミーと協力して「Academy Software Foundation」を立ち上げた。

 この組織は、映画界やその他のメディア産業のオープンソース開発者が、リソースを共有し、映像制作や視覚効果、アニメーション、サウンドのための技術開発で協力することができる中立的なフォーラムとして設立された。創設メンバー企業には、Blue Sky Studios、Cisco、DreamWorks Animation、Epic Games、Google Cloud、Intel、Walt Disney Studios、Weta Digitalが名を連ねている。これは、テクノロジ企業とメディア企業の真の融合だ。

 これらの企業の名前は、知っている人も多いだろう。読者の多くは、「Alembic」「OpenColorIO」「Ptex」といった特殊効果のための具体的なオープンソースソフトウェアの名前は知らないだろうが、Morin氏は「これらは映画を作るために非常に有用だ」と述べている。

 これらのプログラムは、多くの人が考えるよりも重要な役割を担っている。「例えば『ワイルド・スピード』の最新作は、スタントアクション映画のように見えるが、その制作過程を見れば、実際には概してコンピュータで作られた映画だと言ってもいい」とMorin氏は言う。これは「制作中に(メインキャラクターを演じる)Paul Walker氏が亡くなったため、映画の残りの部分では彼の姿を再現しなくてはならなかった」ためだという。

 オスカー像のアカデミー賞で知られる映画芸術科学アカデミーが、映画制作におけるオープンソース利用の組織化を模索し始めたのは、2016年のことだ。映画制作ではオープンソースソフトウェアが利用されることが多くなってきたが、それにはさまざまな問題があった。例えば次のようなものだ。

  • バージョン管理:利用されるライブラリが増えるに従って、ソフトウェアコンポーネントを管理するのは難しくなる。2016年の映画に適していた制作パイプラインを2018年の映画に使おうとすれば、おそらく古くなってしまったコンポーネントがあるだろう。
  • 組織:こうした変更内容を追跡して記録しようと試みたボランティアもいたが、変更内容を記録する以上のことができる資金やリソースはなかった。
  • 資金:多くのオープンソースプログラムには、関係者の転職や資金不足が原因でメンテナーがいなくなっている。
  • ライセンス:オープンソース開発者なら誰でも知っているだろうが、多くのオープンソースソフトウェアでは遅かれ早かれライセンスが問題になる。これは、著作権やその他の知的財産権の問題に極めて敏感な映画業界では、特に問題になりやすい。

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