最新のLinuxカーネルではコードの行数が約2000万行になっており、これを理解するのは大変なことだ。カナダのバンクーバーで開催された、The Linux Foundation主催のイベント「Open Source Summit North America」で、VMwareのバイスプレジデント兼最高オープンソース責任者Dirk Hohndel氏は、Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏に対して、カーネルをすべて理解しているかと尋ねた。Torvalds氏の答えは「ノー」だった。
しかし、これはさほど大きな問題ではないという。Torvalds氏は、「カーネルの全貌を知っている者はいない。ただし私は、長年にわたってパッチを見続けてきたことで、私は全体像を把握している。パッチを見れば、それが正しいか間違っているかは分かる」と語った。
さらに同氏は、「私が気にかけている問題の1つに仮想ファイルシステムがある。これは、私が今でも積極的に活動している領域の1つだ。また私は、すべての緊急の問題と、多くのx86アーキテクチャの問題に関わっている。以前はスケジューラについて心配していたが、今はもう心配していない」と続けた。
では、実際には誰がLinuxの面倒を見ているのだろうか。それは、Linuxカーネルのメンテナーとサブメンテナーだ。Torvalds氏は、今Linuxを作っているのは彼らであり、今自分がバスにひかれてもLinuxは続くだろうと語った。つまり、Torvalds氏は今でもプログラミングを続けているが、作っているのは主にダイビング用のソフトウェア「Subsurface」で、Linuxに関してはマネージャーであり、開発者ではないということだ。
Torvalds氏は、「カーネルの技術的な問題については心配していない。いつも気にかけてはいるが、今、特定の問題を心配しているわけではない。コードそのものよりも、ワークフローの方がはるかに重要だ。もしバグが見つかっても、対処の仕方は分かっている」と述べている。
これがオープンソースの強みの1つだ。そしてこれは、Linux開発者が「Spectre」のセキュリティホールへの対応で問題だと感じていた理由でもある。「複雑な問題には、クローズドな環境では対処できない。それには実際に問題を発見する人間が必要で、それに加えて、それらの人々に問題の解決に関与できる権限を与え、手伝ってもらう必要がある。世界は複雑であり、その複雑さに対処できる唯一の方法は、開かれたアイデアの交換しかない」と同氏は言う。