Intelは9月25日、FPGA(Field-Programmable Gate Array)搭載のアクセラレータモジュールの新モデル「Intel Programmable Acceleration Card(PAC) with Intel Stratix 10 SX FPGA(Stratix 10 PAC)」を発表した。約1年前に発表された「Intel Arria 10 PAC」のFPGAをアップグレードした形で、入れ替えではなく追加モデルと位置付けている。Arria 10 PACをエントリーモデル、Stratix 10 PACをハイエンドモデルというすみ分けになるようだ。
Intel Programmable Acceleration Card with Intel Stratix 10 SX FPGA
FPGAは、現場でプログラミング可能なゲートアレイで、主な用途は、まず動作検証などの試作用途が挙げられる。かつては、処理速度や電力効率などの面で劣り、「現場で書き換え可能」というメリットのために他の要素には目をつぶるといったイメージもあったが、現在では高速化/高性能化が進行しており、特定のワークロードを高速に処理する「汎用のハードウェアアクセラレータ」として活用する用途が伸びつつあるという。
Intelではこうした活用を積極的に推進しており、同社のPAC(Programmable Acceleration Card)がその代表的製品となっている。PACは、FPGAにメモリやネットワークインターフェースなどを組み合わせたPCI接続のアクセラレータ・モジュール・カードだ。GPGPUモジュールと同様に、汎用のIAサーバに搭載することで、特定のワークロードを高速化するために利用するイメージとなる。
GPGPUとの違いは、GPGPUがハードウェアとしては固定であるのに対し、FPGAはハードウェアの回路構成を変更できるため、より広範なワークロードに対応できる可能性がある点だろう。適切な回路構成を準備しておき、適宜切り替えることで何種類ものハードウェアアクセラレータを使い分けるような、FPGAならではの新しい使い方を実現できる。IntelのPAC投入を受け、Dell EMCや富士通がサーバの標準オプションとしてPACの提供を行っているほか、新たにHewlett Packard Enterprise(HPE)のサーバでも標準オプションとして提供が開始されることが発表されている。
Intel PAC(Arria 10搭載版とStratix 10 SX搭載版)の位置付け
運用管理面での支援も充実してきている。NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)が9月20日に「OpenStackでFPGA回路のリソース管理を動作実証」という発表を行っている。こうした運用環境が実用化されれば、特定のワークロード向けにカスタマイズ済の仮想サーバイメージを起動するのと同じように、サーバ上のPAC(FPGA)に任意の回路を読み込ませ、特定ワークロード向けのハードウェアアクセラレータとして利用するといった使い方を実現できると思われる。
新たに追加されたStratix 10 PACは、FPGAとしてIntel Stratix 10 SXを搭載しており、従来のArria 10搭載版と比較して、2倍以上のロジックエレメントを搭載する。4チャネル 32GバイトのDDR4メモリをオンボード搭載するほか、100GbE×2ポート、PCIe Gen3×16などの構成で、メモリ帯域を重視する処理などに向くという。
Intel PAC with Intel Stratix 10 FPGAの概要