マシンデータからアンサーを導き出す企業に――米Splunkは10月1~4日、米国フロリダ州オーランドでプライベートイベント「.conf18」を開催している。10月2日の午前には、「Visionary and Roadmap Keynoteが開催され、プレジデント兼最高経営責任者(CEO)のDoug Merritt氏やシニアバイスプレジデント 最高技術責任者(CTO)のTim Tully氏が新製品や開発中の新技術などを紹介した。
基調講演に登壇したプレジデント兼CEOのDoug Merritt氏。Tシャツの胸元には“I like big data and I cannot lie.”(私はビッグデータが好きで、嘘がつけない)と書かれている。「ビッグデータは真実を語る」ということになるだろうか
Merritt氏は、データ爆発といわれる状況を踏まえ、大量のデータから価値のある情報を引き出すことがますます困難になっていることを指摘した。「人々は(混乱状況を)構造化するのが好きだ(People like structure)」と表現し、さらに「しかし、構造化は固定化につながる(But structure freezes you)」と指摘した。
つまり、刻々と発生し続けるデータをリアルタイムに追跡し、常に最新のデータに基づいた判断を行うよう、意識的に取り組まないと、ある時点で生成された“構造”に縛られてしまい、そこからはみ出す新しいデータを無視することになってしまうリスクがあるという認識だ。これを踏まえ、同社のソリューションでは、今後さらにリアルタイム性や柔軟性を重視していくという意思表明でもあるようだ。
具体的な製品や技術に関してTully氏が、次々と担当者を壇上に招きながら紹介していった。具体的な新製品としては、「Splunk Cloud」および「Splunk Enterprise 7.2」のリリースがアナウンスされたが、それと同時に将来的な取り組みとしての「Splunk>next」も説明した。
製品や技術を紹介したSVP兼CTOのTim Tully氏
Splunk>nextは、現時点での具体的な製品というよりは、今後の開発方針を示すコンセプトないしはビジョンといったものであるようだが、基調講演ではベータ版と断りつつ。具体的な新機能として「Splunk Data Stream Processor」や「Splunk Data Fabric Search」「Splunk Mobile」「Splunk Augmented Reality」などの新機能のデモが公開され、開発が順調に進展していることを示していた。
Splunk>nextでは、「DATA WHEREVER IT LIVES」「ACTIONABLE OUTCOMES」「EMPOWER MORE USERS」の3つの目標を掲げている。「どこにあるデータでも(広範なデータソースをサポート)」「行動可能な出力(データに基づいた行動を起こすことを可能にする)」「より多くのユーザーにパワーを」といった意味になるだろう。
これらの目標は、既存のプラットフォームも同様で、一貫したコンセプトに基づいた継続的な開発が進行していることを示すものと理解できる。Splunk>nextでは、こうしたコンセプトに基づく新機能を順次既存のプラットフォームに組み込む形で製品機能を拡張していくという段階的な進化が示唆された。
長期的な展望であるSplunk>nextに加え、直近で提供される新製品などについても多数発表された。同社製品は各種ログデータやセンサデータなど、刻々と発生するマシンデータに対して、あたかもウェブサイトに対してサーチエンジンが行うような、使いやすい検索機能で目的の情報を的確に見つけ出すことを支援する。主な用途としては、ITインフラを構成する各種機器のログデータを解析して運用管理に役立てるIT管理や、同じくログ解析に基づくセキュリティ対応などが中核となる。
さらに、昨今の盛り上がりを反映してIoT(モノのインターネット)や機器制御といった分野にも注力すると同時に、人工知能(AI)/機械学習への取り組みを強化しており、ユーザー操作による柔軟な情報検索に加え、AIによる自動的な問題発見や将来予測なども組み込まれている。基調講演では、IT管理向けの「Splunk IT Service Intelligence 4.0」、4月に発表されたPhantom買収を踏まえた機能強化を図ったセキュリティ製品群として「Splunk Enterprise Security 5.2」「Splunk User Behavior Analytics 4.2」「Splunk Phantom 4.1」などが紹介された。
基調講演の冒頭でMerritt氏は、「8000人以上の来場者に感謝したい」と語ったが、この数年でイベント参加者も数倍ペースで増加しており、今回は過去最大規模という。同社のビジネス規模や社員数なども急成長中といい、そうした勢いが顕著に感じられる基調講演となっていた。成長を遂げた企業の場合、洗練されたビジネスエグゼクティブがスピーカーを務めることが一般的だが、今回の基調講演に登壇した同社のスピーカーの多くは若いエンジニアで、かつコーポレートカラーの黒のTシャツの胸元にはそれぞれ別々のメッセージをプリントしているなど、若いエンジニアコミュニティーが好みそうなちょっとした仕掛けがあちこちに施されているのも印象的だった。パートナーなども含め日本からの参加者も100人規模になるという。
(取材協力:Splunk)