Appleは新機能を盛り込んだ新型の「iPad Pro」「MacBook Air」「Mac mini」を発表した。特に「MacBook Air」「Mac mini」は、長年の間新しいモデルが発表されていなかったが、今回の刷新で企業への導入が進む可能性がある。今回の発表で、iPad Proにプロフェッショナル向けアプリが追加され、MacBook Airには「Touch ID」が搭載された。
同社は米ニューヨーク州ブルックリンで開催された発表イベントの冒頭で、企業が関心を持つであろう機能について紹介している。従来の法人向けの取り組みでもそうだったが、同社は法人での利用ケースについては直接言及はしておらず、強く示唆するにとどまっていた。企業が悩む点があるとすれば今回の価格設定で、IT部門の役員は、iPad ProとMacBook Airのどちらが得か頭を悩ませることになるだろう。
iPad Proは11月7日に発売される。ストレージが64Gバイト、256Gバイト、512Gバイト、1Tバイトのモデルがある。11インチのモデルは価格が799ドル(税別8万9800円)、12.9インチのモデルは999ドル(税別11万1800円)からとなっている。既存の10.5インチのモデルは649ドル(税別6万9800円)で併売する。MacBook Airは1199ドル(税別13万4800円)からとなっており、Appleは、MacBook AirをiPad Proに対抗させるような形で発売することにしたようだ。
イベントでiPad Proの価格が発表されたときの様子。
以下が今回発表された製品の概要だ。企業でどのように活用されるかの考察とともに紹介する。
MacBook Air(2018年モデル)
最初に発表された新型MacBook Airは、トラックパッドが大型化され、バタフライ構造が採用されたキーボードには独立型のバックライトが組み込まれ、ベゼルは無くなり、T2セキュリティチップを搭載した。また、今回からディスプレイはRetinaになった。
今回のMacBook Airは学生や一般消費者向けのものとして紹介されたが、私物デバイスの業務利用の形で、職場でも利用されるようになるはずだ。Appleの最高経営責任者(CEO)Tim Cook氏は、「MacBook Airは小が大を兼ねられることを示した。またその過程で、現代のノートPCのあり方を変えた」と語ったが、MacBook Airは実際にさまざまな職場で使われている。
MacBook Airは1199ドル(税別13万4800円)からとなっている。前モデルよりも高いが設備にかかる税額控除を受けられる小規模な企業に訴求する可能性がある。
MacBook Air(2018年モデル)の仕様
- 高さ15.6mm(先代モデルよりも10%厚みが減少)。
- CPUに第8世代IntelデュアルコアCore i5プロセッサを採用。
- 最大1.5TバイトのSSD。
- 最大16Gバイトのメモリ。
- 給電、USB、Thunderbolt、HDMI、VGI、DisplayPortとして利用できる2つのThunderbolt 3(USB-C)ポート(一部の用途には変換アダプタが必要)。
- リサイクルアルミニウム100%使用のフレーム。
- 重さ2.7ポンド(1.25kg)。
MacBook Airは「MacBook Pro」とは違って法人利用を前提に設計されている訳ではないが、企業の関心を引くだけの製品に仕上がっている。
Mac miniも、個人のファンだけでなく小規模な企業の関心を呼ぶだろう。
「iPad Pro」(2018年モデル)
MacBookの価格上の競争相手はApple社内にしかいないのかもしれない。そういった点で、iPad ProはMacBook Airの競争相手と言えるだろう。
iPad Proは、「iOS」のエコシステムが企業のモバイルプラットフォームにおける主力の選択肢であり続けることを確実にするための製品という側面が強い。
Cook氏は、MacBookとiPadの競争という図式を描いてみせるうえで、2017年のiPadの販売台数がどの大手メーカーのノートPCの販売台数よりも多かったと述べた。同氏によると、Appleはこれまでに4億台のiPadを販売しているという。
iPad Proは極上のエクスペリエンスと最高のスペックを実現するよう設計された。言い換えれば、これは企業やクリエイティブなプロフェッショナル向けの製品だ。ただ、どういった従業員がノートブック、あるいはiPad Proを手にするのかはまだ分からない。Cook氏は、「iPadやほかのあらゆるコンピュータでできることをさらに押し広げていく」と述べた。
iPad Pro(2018年モデル)の仕様
- ホームボタンを廃止。
- ベゼルが小型化。
- 新しい「Apple Pencil」はサイドの平らな面を磁力でiPadに取り付け可能。
- LCD画面はエッジからエッジまで広がる。「Liquid Retinaディスプレイ」。
- 11インチのディスプレイは2388×1668ピクセル解像度、264ppi。
- 12.9インチのディスプレイは2732×2048ピクセル解像度、264ppi。
- Face ID搭載。
- 薄さは5.9mmで前モデルから15%薄型化。
- 12MPの背面カメラと7MPの前面カメラを搭載。
- A12X Bionicチップを搭載。
- ストレージは最大1Tバイト。
- USB-Cコネクタを搭載。
新型iPad Proの仕様を見ると、大きなリソースを要求するアプリの実行能力が強化されていることが分かる。また、Adobe Systemsが2019年にリリースするiPad向けの「完全版の『Photoshop』」のプレビューを実施したこともiPad Proにとってプラスになるだろう。さらに、Autodeskが「AutoCAD」をiPadでも利用できるようにすると述べたことで、企業にとっての適性がさらに強まっている。
iPad Proはノートブックのようなエクスペリエンスを実現しており、このエコシステムに対する企業の関心を引きつけておく狙いがあるようだ。「Microsoft Surface」などの製品も最高情報責任者(CIO)たちの関心をめぐって競争している。
Appleのエンタープライズエコシステムを強化する最近の動きを考えてみよう。
- Adobeは「Adobe MAX 2018」カンファレンスで、「Adobe Photoshop CC」がどのようなかたちでiPadをフルサポートするようになるのかについて概説した。またAdobeの幹部は、iPadの能力とApple Pencilによって、Photoshopがより自然なかたちで実行できるようになるとも述べた。Adobeが新しいiPad Pro向けのPhotoshop CCを開発しているのは明らかだろう。
- Jamfが開催した「Jamf Nation User Conference」(JNUC)で、IBMの最高情報責任者(CIO)Fletcher Previn氏は、同社のMac専用システム管理プログラム「Mac@IBM」をオープンソース化すると発表した。IBMはここ3年、社内への「macOS」デバイスの配備に取り組んでいる。2015年時点でIBMの従業員3万人がMacを使用しており、2018年にはIBMにおけるMacのユーザーベースは13万4000人に達している。IBMはMac@IBMプログラムから得た教訓を同社のPC配備にも活用している。
- Jamfによると、SAPは「Jamf Pro」を利用し、Appleデバイスを単一のエコシステムとして管理する計画だという。SAPは職場でMac1万7000台と、iOSデバイス8万3000台、「Apple TV」デバイス170台を擁する。
- Microsoftは「JamfおよびMicrosoft Enterprise Mobility+Security(EMS)パートナーシップ」により、ユーザーがMacデバイスの「Azure AD」認証済みアプリケーションにアクセスできるようにする。
- 大手企業では最近、SalesforceがAppleと連携し、アプリをiOSに最適化している。これまでに、CiscoやAccenture、SAP、IBMもAppleのエンタープライズパートナーとなっている。
このようなことから、新しいiPad ProのリリースとMacのアップデートは明らかに、テクノロジ系の報道や消費者の熱狂、インフルエンサーとの関係に重点を置いたものではないように見受けられる。これらのハードウェアの発表は、企業が収益を上げるのに役立つことを目指すものだったのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。