Hewlett Packard Enterprise(HPE)は米国時間11月1日、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士たちに高性能コンピューティング(HPC)をもたらしたと発表した。
HPEと米航空宇宙局(NASA)による共同プロジェクトの一環として、2017年に打ち上げられたロケットに搭載された商用オフザシェルフ(COTS)のスーパーコンピュータ「Spaceborne Computer」は1年間のテストを終え、今後はデータを地球に向けて送信することなく宇宙空間内でデータを直接分析できるよう、宇宙飛行士を支援する。
HPEとNASAは過去1年にわたり、Spacebourne Computerの信頼性(環境からの影響に対する回復性能など)をテストしてきた。高性能のCOTSシステムはこれまで宇宙空間での稼働実績がなかった。NASAは通常、放射線や太陽フレア、流星塵、不安定な電源、過酷な温度環境といった変動要素に対する「耐久性を向上させた」コンピュータのみを宇宙での利用にかなうものとして承認している。
HPEでHPCおよび人工知能(AI)を担当する最高技術責任者(CTO)兼バイスプレジデントを務めるEng Lim Goh氏は声明で、「Spaceborne Computerによる最初の実験が成功したことで多くの知見が得られた。今後、われわれはISSの研究者らが雲のはるか上でHPC能力を活用できるようにし、彼らの宇宙探査を新たなレベルにまで押し上げられるようにすることで、その可能性をテストし続ける」と述べている。
Spaceborne Computerは、ハードウェアには全く手が加えられず、高速なHPC用インターコネクト技術を採用した「HPE Apollo 40」クラスのシステム上でオープンソースのLinuxが稼働している。HPEは専用のソフトウェアによって、コンピュータシステムのスロットリングをリアルタイムで管理し、外部環境に起因する放射線やその他の影響に対応することで、同システムを強化している。またこのシステムのハードウェアを冷却するために、水冷式の独自のエンクロージャを採用している。
宇宙空間でのコンピューティングにはさまざまな制約があるため、宇宙研究のための計算処理の多くは地球上で実行されている。しかし、火星近傍のミッションでは、電波が地球に到着し、宇宙船に戻るまでに40分ほどかかる。ミッションクリティカルなシナリオにおいて、こういったレベルのレイテンシは宇宙飛行士を危険にさらす可能性がある。
一方、研究者らはISSで収集された大量のデータの1つの側面を確認できればよいことが多い。宇宙ステーション内でデータを処理できるようになれば、研究者らは大容量のデータセットを送信するために、ネットワーク帯域幅のすべてを使い切らなくても済むようになる。これにより、緊急時の通信のための帯域幅を確保しておけるようにもなるはずだ。

提供:NASA
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。