NTTデータは1月25日、量子アニーリング方式のビジネス利用について検証や評価などを行う「量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボ」を開設し、同日からサービスを提供すると発表した。2020年度末までに20件程度の概念実証(PoC)案件の獲得を目指すとしている。
量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボでは、量子アニーリング方式のシステムを開発、提供しているD-Wave Systems、日立製作所、富士通、NTTと、数理最適化の分野でインドのDeepTekおよびAlgoAnalyticsと連携。将来のサービス対応を視野に、「量子ゲート方式」を手掛けるIBMとも協力する。
「量子コンピュータ/次世代アーキテクチャ・ラボ」サービスの体制。量子アニーリング方式各社の実機サービスで検証できる。NTTデータが検証作業周辺の部分を支援するという
サービスでは、量子コンピュータの活用を期待する企業に対して、量子アニーリング方式を用いる適用性の可否の評価(適用可能な問題の洗い出しなど)、検証実機の選定と数理最適化などの作業、業務要件などに即した評価のほか、プロトタイプの開発や利用者向けのセミナー、トライアル支援などのメニューも用意する。利用料は個別見積りになるが、概ね数百万円からになるという。
記者会見した技術革新統括本部 技術開発本部 部長の稲葉陽子氏は、「例えば、『OpenAI』によれば、AI(人工知能)の学習データの計算量は3カ月半で2倍の増加ペースであるのに対し、従来のコンピュータアーキテクチャにおける『ムーアの法則』での計算能力は18カ月で2倍になるため、新しいアーキテクチャの量子コンピュータが必要とされている」と述べた。
NTTデータがまとめた現状における量子アニーリング方式と量子ゲート方式の差異
量子コンピュータ分野は、2011年にカナダのD-Wave Systemsが量子アニーリング方式のシステムを実用化したことで各社の開発ペースにも弾みがつき、商用サービスが増えつつある。量子コンピュータでは、あらゆる計算用途に対応できるとされる量子ゲート方式への期待が高いものの、現状では実用レベルに到達しておらず、「組み合わせ最適化問題(例えば、非常に複雑な経路環境の中で最も最適な経路を導き出すといった問題)」に特化して実用性のレベルが向上しつつある量子アニーリング方式が先行しているという。
稲葉氏によれば、量子アニーリング方式は、具体的に経路最適化やディープニューラルネットワークにおける機械学習、画像処理といった用途に向くとし、ビジネスへの応用を期待する企業に対応すべく今回のサービスを立ち上げた。既に第一生命保険が金融工学分野での量子アニーリング方式の可能性検証を目的に今回のサービスを利用する意向であることを明らかにした。
量子アニーリング方式での検証には、ユーザーの検証したい課題を適用できるか、適用可能であれば関数の定式化や変換といった数理最適化処理が必要
ユーザーの検証したい課題に対応可能なシステムの選定にもノウハウなどが必要になる