日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2月8日、IoT/エッジコンピューティング向けのソリューション製品となる「HPE Edgeline EL300 Converged Edge Systems(EL300)」「HPE Edgeline OT Link Platform Software」「HPE Edgeline Integrated System Manager(iSM)/HPE Edgeline Infrastructure Manager(EIM)」を発表した。提供開時期と価格は、EL300が同日に提供を開始し、47万7000円からで、iSMも同日から提供し、無償ライセンスがEL300に含まれるほか、有償ライセンスでも提供し、8万3000円からとなる。EIMは3月に無償提供および有償販売を開始する予定。OT Link Platform Softwareは5月に販売を開始する予定となる。
「HPE Edgeline」製品群
EL300は、「IoT/エッジコンピューティング専用コンピュータ」と位置付けるハードウェア製品で、ファンレスながら氷点下30度から摂氏70度の広範な温度範囲での動作を実現する。と同時に、最大32GBメモリ/3TB SSDサポートなど、サーバとしての処理能力も高い水準にある。なお、プロセッサはIntel Core i5/i7およびAtomから選択可能。ITとOT(オペレーショナルテクノロジ:制御系システム)の融合を意図しており、OT分野でよく使われるインターフェースであるTSN、CAN、Serial、GPIOなどを搭載できる。
HPE Edgeline EL300 Converged Edge System
OT Link Platform Softwareは、OT分野で利用されるさまざまなデバイスとプロトコルをサポートするソフトウェアで、IoTで利用される主要プロトコルや、IT/クラウド側でのAmazon Web Services(AWS)、Google、Microsoft Azure、PTC、SAP、SASなどもサポートする。
概要を説明した執行役員 ハイブリッドIT事業統括の五十嵐毅氏は、同社の「エッジ戦略」について述べ、今回の発表製品の位置付けを明確にした。同氏は「今後作られていくデータの7割はエッジで生まれる」という予測を紹介し、「ITシステムやクラウドに既にあるデータと、今後エッジで生まれてくる新しいデータをいかに有効活用していくかが重要になっていく」という認識を示した。
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 ハイブリッドIT事業統括の五十嵐毅氏
続いて、同社のエッジへの取り組み詳細について、米Hewlett-Packard EnterpriseでConverged Servers Edge & IoT Systemsを担当するバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのTom Bradicich氏が説明した。同氏は「単なる新製品の発表ではなく、“Converged Edge Systems”という新しい製品カテゴリーの発表」と強調した上で、これらの製品を持ってHPEが新たにOT市場に参入することがニュースだと語った。
Hewlett-Packard Enterprise Converged Servers Edge & IoT Systems担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのTom Bradicich氏
五十嵐氏が紹介したこれまでの経緯では、まず2016年6月に開催したカンファレンス「Discover 2016」で全く新しい製品カテゴリーとして「Converged Edge Systems」が発表され、Edgeline製品群の販売がスタートしている。このため少々分かりにくいが、ハードウェアレベルでのITとOTの融合という意味では、既存製品である「Edgeline EL1000/4000」でも実現されていたが、今回発表されたHPE Edgeline OT Link Platform Softwareなどのソフトウェア環境の拡充によって、本来の意味でのOTとITの融合が実現できる環境が整ったというのが、真意であるようだ。
一方、競合他社などから既に「Industrial PC」といった形でOT分野での利用を想定したPCなどが製品化されている。だが、これらは基本的にPCであるのに対して、EL300ではMicrosoftやRed Hat、VMware、Oracle、SAPなどのエンタープライズソフトウェアベンダー各社の認定基準を満たした“エンタープライズサーバ”クラスのハードウェアであるという点が違いとして強調された。
「HPE Edgeline」のソリューションコンセプトイメージ(出典:HPE)
いずれにしても、従来はベンダーやシステムごとに分断された環境が一般的だったOT分野に、IT流の標準プラットフォームを実現すべく投入された意欲的な製品であることは間違いない。同時に、OTとITの融合は、国内でも主にOT分野のベンダー各社が積極的な取り組みを開始しており、2018年頃から話題に上ることが増えてきているホットな分野でもある。今後の主導権争いが激化していくことが予想される。