中身を知ることが信用につながる
“AIとコントロール”という手法を構築して、AIを利用したいが不安もあるという顧客の声に対応しているのがKPMGだ。同社でディレクターを務めるKelly Combs氏によると、この手法はデータの完全性、相互運用性、説明性、公正性と4つの要素を持つ。ここで活躍するのがOpenScaleだ。
「どのデータを使ったのか、何を基準に判断したのかなどをたどることができるため、AIがどのように行動しているのか、例えば、なぜクレジットカードの審査に落ちたのか、などが分かる」とCombs氏。顧客の戸惑いを克服するために大きく貢献しているという。「AIはブラックボックスではないことを理解してもらうために、中身を知ることが大切。そうすると信用につながる」
IBMは、これら製品側での強化に加えて、認定制度やトレーニングの導入も約束している。AIを使いやすくすると同時に、知識のある人の育成も進めていくという方針だ。
IBM Data and AI担当ゼネラルマネージャーのRob Thomas氏
製品への落とし込みが重要
技術研究の側面では、IBM Researchでディレクターを務めるDario Gil氏が、“AIのためのAI(AI for AI)”とする最新技術「AutoAI」のデモを披露した。
例えば、マーケティング施策を展開するに当たって、その反応を予測するモデルの構築を自動化する。ウィザード形式でモデルの構築を進め、その過程でシステムがデータセットの選択を提案してくれる。「既に作成したデータセットから自動で最適なものを選択できる。これは重要なメリットになる。スキルレベルが異なる人でも高い精度に到達できる」(Gil氏)
AI分野では2018年に約1600件の特許を取得するなど、技術リーダーとして研究開発を積極的に進めていることも明かした。その方向性としては、「コアAIの境界線を広げている。同時に、主要なイノベーションに信頼のレイヤを加えること、そして技術がスケールするようにすることも重要だ」(同氏)という。AutoAIは現在、ベータ版の事前登録が可能になっている。
Krishna氏は、単に技術革新を進めるだけではなく、顧客企業のニーズを満たせるよう、AIをどのように製品に落とし込んでいくかが重要だと語った。現在、Watsonは20の業界、80カ国で顧客を持ち、事例は1000件単位に及ぶ。「コグニティブとAIソフトウェアでは最大の市場シェアを誇る」とThomas氏は胸を張った。
(取材協力:日本IBM)