本連載では、筆者が「気になるIT(技術・製品・サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は趣向を変えて、ITに関連する「気になる調査」を紹介したい。
システム利用の有無と労働生産性の高低に高い相関性
気になる調査とは、ウイングアーク1stが先頃公表した「WingArc1st Data Empowerment Report 2019」のことだ。日本のビジネスパーソン1000人を対象に、ITシステムの活用状況や労働生産性に関する意識調査を行ったものである。調査の実施期間は2018年8月31日から9月3日で、男女20歳から69歳までの全国の一般オフィスワーカーからインターネットを通じて回答を得たという。
この調査レポートでは、次の6つの実態が明らかになったとしている。
- システムの利用の有無によって、労働生産性に対する自己評価に約2.6倍の差が生まれる。
- 労働生産性に関する自己評価が高いシステムのトップ3は「ビジネスインテリジェンス(BI)」「統合基幹業務システム(ERP)」「名刺保存、整理」の利用者である。
- システム化や情報化によって、1日約27分、1カ月で約9時間の短縮が期待される。
- 人工知能(AI)、自動化システムの利用度は二極化。ただし、活用、実益という面では発展途上にある。
- 労働生産性向上の最大の障害は、業務の標準化、単純化、可視化、共有化ができていないことにある。
- 時間がかかっている業務トップ3は、「社内資料の情報管理」「社内資料の情報検索」「ワークフロー」である。
本稿では、この中から1つ目と5つ目の内容について取り上げておく。
1つ目については、「自分は労働生産性が高いと思うか」との質問に対し、普段から職場でシステムを利用している人の61.2%がそう思うと答えたのに対し、利用していない人では23.7%にとどまった。
この結果から、システム導入済みの職場では、労働生産性に関する自己評価が高い人が、未導入に比べて約2.6倍も多くいるということが分かった。(図1)
図1:システムの利用有無ごとの「自分は労働生産性が高い」という回答の割合(出典:WingArc1st Data Empowerment Report 2019)