「ユーザー部門はドキュメントがなおざり」3000時間の創出を目指すDNPのRPA施策

阿久津良和

2019-02-21 06:45

 大日本印刷(DNP)は2017年11月からロボティックプロセスオートメーション(RPA)の導入を進めている。同社の情報イノベーション事業部 情報化推進部 部長 山頭理氏が、RPAツール「UiPath」を中心にして1月30日に開かれたイベント「#UiPathForward Japan」の「RPA案件、発掘の方法とは?」というセッションに登壇。同社のRPAの進め方を説明した。

 DNPは印刷業を手始めに生活資材、部品系などさまざま事業を多角化させてきた。そのなかで山頭氏は所属するイノベーション事業部について「印刷に始まる情報はコミュニケーションの中核事業部。DX(デジタルトランスフォーメーション)の波を受けて業務改革を進めている。そのためRPAへの期待が大きかった」と自部署が担った役割を説明した。2017年11月から事業部全体のRPA導入推進を開始し、現在は四半期ごとに計画の見直しや修繕を重ねながら、削減時間の目標を決めて推進を加速させている。

 モデレーターが「誰が、どのように要件定義するか」と尋ねると、山頭氏はプロジェクトチームを設立してRPA化に取り組んでいると説明。「システム部門や業務部門、改善改革部門からコアメンバー10人前後で設立。さらにユーザー導入部門からの参加を仰いで、現在は300人以上が導入ユーザー部門から参加している。各部門の課題を抽出し、業務内容をPRA化する整理しながら要件定義を進めている」

大日本印刷 情報イノベーション事業部 情報化推進部 部長 山頭理氏
DNP 情報イノベーション事業部 情報化推進部 部長 山頭理氏

 「RPA化の判断基準」について問われると山頭氏は「投資効果も重要だが、弊社の事業は固定的な業務にとどまらず、一人ひとりが小さな事業要素を抱えている状態のため、単純に掘り起こすのは難しい。この課題を解決するため、一定期間の業務効率化、時間削減を目標値に掲げている。四半期ごとの計画見直しはここに通じており、今期であれば3000時間創出を目標値としているが、1件ごとのROIを問うのではなく、各種計画をまとめて平均的効果を判断している」と回答した。

 モデレーターによる「開発担当者は誰か」という質問に対して、DNPは情報システム子会社による集中開発の単独手法で取り組んでいることを明かした。同社は統合基幹業務システム(ERP)に情報が集中しているため、ロボット開発後の運用や維持を踏まえると、ユーザー部門の開発では品質維持に不安が残るため、基幹システムを担当する子会社にロボット開発資源を集中させている。

 今後は「微細な業務もRPA化を目指すため、野良ロボット対策やロボットの品質一定化を目指しつつ、業務全体の加速化を狙っている」(山頭氏)

 現状の課題について問われると山頭氏は「ユーザー部門(によるロボット開発)は効率的でテストも実態に即している。そこは否定しないが、ドキュメント作成がなおざりになるなど、管理面を踏まえると一長一短。ただ、従来の開発部門単独には限界があり、膝詰めで取り組めるコミュニケーションを構築するといったCoE(Center of Excellence)の工夫も必要」と返した。

 最後に聴講者へのメッセージを求められると山頭氏は「『ユーザー部門の導入障壁を取り除き、参加意識を高める』『増えていく対応部門に過去の事例や進め方の情報を知見として共有することも有効』『構築、導入と変更してロボットの維持、管理体制も整備』『自社の風土や組織にあった進め方が継続の鍵』」と4つの要素を強調した。

 同社は自動化可能な要素を“霜降り肉の脂の絞り出し”と呼び、うまく絞り出すのがプロジェクトチームのスローガンだという。「共通意識を持つと、うまく推進する」(山頭氏)とユニークながらも真っ当な見解を述べた。

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