労働環境改革を進める電通は2017~2018年の2年間に「総労働時間を80%に」「創出した20%で新たな価値創造」を合い言葉に取り組んできた。その結果として2014年は2252時間、2015年は2187時間、2016年は2166時間の総労働時間が、2017年は2031時間(目標2100時間)、2018年は1952時間(目標1950時間)と順調に効果が現れている。同社もロボティックプロセスオートメーション(RPA)を効果的に活用している。
RPAツール「UiPath」を提供するUiPathが1月30日に開催したイベント「#UiPathForward Japan」に電通と電通デジタルが「RPAの保守運用管理の現場から」という講演に登壇して、2社のRPA活用を解説した。
電通デジタル 取締役 副社長 執行役員 阿部満氏
先に説明した取り組みは電通本社に限らず、グループ全体に広げている。電通デジタル 取締役 副社長 執行役員 阿部満氏は「電通デジタルは電通のデジタル広告業務の効率化を推し進めたいとの思いから、昨年から取り組みを開始。2018年はRPAによる効率化を推進した結果、予算に対する実績は大きく上回り、生産性の向上に至った」と説明する。
具体的な数値は明らかにしなかったものの、本来イコールである実績値と予算値だが月を重ねることに実績値が上回り、2018年12月時点では1.2倍程度の開きが生じた。
だが、現場の声を聞くと「実は不安」という声が少なくないという。その背景にデジタル広告業務は煩雑な手作業を伴い、ミスや事故を誘発する要因になってきた。
前述の通りデジタル広告業務にRPA自動化を適用した電通デジタルだが、「RPAは時間創出など効率化に焦点が当たりがちだが、弊社としては『現場のミスが起きるという不安からの解放』が重要な効果の1つとして捉えている」(阿部氏)と述べ、積極的運用に努めている。
その証左ではないが、同社における2018年の年間事故発生率は1%未満となった。手作業時の事故発生率を提示していないため、単純比較はできないものの、同社は「今年2019年はRPA化の推進で0.5%を目標に掲げている」(阿部氏)
他方で電通デジタルにおける課題の1つが「プラットフォーム側における突然の仕様変更」だという。ウェブの仕様変更はある意味日常的な風景だが、RPAによる自動化を阻害する要因になるのは火を見るより明らかだ。この課題を解決したのが「ロボット人事部」である。
ロボット人事部とは稼働分析やエラー監視、障害や問い合わせへの対応、事前影響調査、変更要望対応といったロボットに関する業務を担う。もちろん正式な部署ではなく、電通 ビジネスプロセスマネジメント局 COE推進室 推進1部 間瀬芽久美氏によると「あくまで通称」だという。
ロボット人事部はユーザー対応部隊とロボットをチューニングする部隊に分かれており、電通グループで稼働する、すべてのロボットを管理している。大半が有人/半自動ロボットとして稼働する「Attended Robot」だが、最近は現場もロボットによる業務自動化に慣れてきたため、無人/全自動ロボットの「Unattended Robot」への切り替えを進めつつある。