Microsoftは米国時間3月21日、DNAを利用して自動的にデータの格納/復元を行うシステムを披露した。
提供:Microsoft
DNAはわずか1グラムで215ペタバイトのデータを何千年も保持することが可能で、DNAが長期データ保存における次の大きな1歩になり得るとMicrosoftは考えている。もしもこのテクノロジが実を結べば、世界で増え続けるデータの保存に必要なスペースが大幅に削減されるはずだ。
Microsoftと、ワシントン大学のPaul G. Allen School of Computer Science & Engineering(Microsoftの共同創業者である故Paul Allen氏の寄付により新設された研究機関)の研究者らは、液体や管、注射器、電子機器などを組み合わせて卓上サイズの装置を作り上げ、初の自動化されたDNAストレージデバイスを実現したとしている。
研究者らは、このPoC(概念実証)版DNAストレージデバイスを用いて、「hello」という単語をエンコードしてDNAの小片に書き込み、それをデータに復元することで、読み書き機能を示してみせた。
この卓上サイズの装置のコストは1万ドル(約110万円)程度だが、研究者らはセンサやアクチュエータを減らすことで、低容量の装置であれば3分の1のコストで製造できると確信している。
Natureの解説によると、この装置はデジタルの1と0をDNAのアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基に翻訳するためのエンコーディング/デコーディングソフトウェアを搭載したコンピュータと、DNA合成モジュール、DNAのプレパレーション/シークエンシング(塩基配列の決定処理)モジュールで構成されており、両モジュールの間にDNAの格納容器が配置されている。
Microsoftの主席研究者であるKarin Strauss氏によると、研究グループの目標は、DNAデータストレージを自動化するための実用的な手段があることを証明するというものだったという。
Strauss氏は「最終的には、他のクラウドストレージサービスとよく似たかたちの、エンドユーザー向けシステムを製品化するのが目標だ。実現されれば、情報がデータセンターに送信され、そこで格納され、顧客の要求に応じて復元されることになる」と述べた。
「その実現に向け、われわれは自動化という観点から実用性を証明する必要があった」(Strauss氏)
Paul G. Allen School of Computer Science & EngineeringのシニアリサーチサイエンティストであるChris Takahashi氏によると、DNAの合成やシークエンシングを行う装置は既に存在しているものの、そのプロセスの多くで手作業が必要となっているという。
Takahashi氏は「ピペットを携えた複数の人員をデータセンター内で走り回らせるわけにはいかない。それではヒューマンエラーが発生しやすくなるとともに、コストが高くなるうえ、設備も巨大なものとなってしまう」と述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。