経理財務の業務の自動化サービスをクラウドで提供するBlackLineは3月25日、日本市場での業務本格化に向けてビジネス戦略を発表。2018年10月に日本法人を設立し、2019年1月に事業を開始した。経理処理でいまだに根強く残るアナログ部分をデジタル化し、業務負荷の平準化や自動化を進める。
BlackLineは、企業の経理業務を自動化・効率化するサービスをクラウドで提供する企業。2001年に米国で創業し、2016年10月にNASDAQへ上場。世界150カ国以上で2600社超の顧客を抱え、およそ22万人に及ぶユーザーがサービスを利用している。「いまだにほとんどの企業が、表計算ソフトを使って月次、四半期、年次で収支決算を報告している。そのプロセスの多くは手作業、反復作業に依存した状態だ」と創業者で最高経営責任者(CEO)のTherese Tucker氏は話す。
BlackLineの創業者で最高経営責任者(CEO)のTherese Tucker氏
近年、最高財務責任者(CFO)を取り巻く環境は厳しさを増している。生産性の観点では少子高齢化による労働力の減少があり、スピードの観点では経営の高速化の必要性が求められている。そして、ガバナンスの観点では頻発する財務不祥事への対応もある。
一方で、企業のデジタル変革に対する取り組みは、収益を生み出している直接業務が優先され、会計や人事などの間接業務は後回しにされがちだ。その結果、間接業務に残ったアナログ処理が企業のデジタル化の足を引っ張り、経営の高速化を阻む要因の一つとなっている。
「残高照会や証跡作成、監査対応などはマニュアル処理が多く残っている領域であり、デジタル化に向けた最後の課題だ」と日本法人の代表取締役社長に就任した古濱淑子氏は指摘する。
CEO(最高経営責任者)/CFO、経理マネージャー、決算処理現場、監査人などいたるところで問題が発生している
特に決算時の一時的な負荷増大とそれに伴う人手不足に対しては、“コンティニュアスアカウンティング”と呼ばれるアプローチを提唱する。これまでの会計業務や決算処理のように、前の処理が終わらないと次の業務が始まらない直列処理とは異なり、締めを待たずに継続的に業務を回し続けることで負荷の平準化や処理の高速化を目指す。
BlackLineでは、2600社の顧客から集めたナレッジをもとに開発した自動化ルールやビジネスロジックをプラットフォームに組み込んでいるほか、監査対応などのテンプレート集も用意する。また、経理業務だけでなく、決算報告に必要な周辺処理までを含めてワークフローで管理し、可視化することも可能だ。
統合基幹業務システム(ERP)、銀行の入出金明細、販売時点管理(POS)、顧客関係管理(CRM)、Excelファイルなどのデータソースに対応する。SAP、NetSuite、Oracle、Microsoftといった各製品向けのコネクタ類も提供する。
基盤機能として、「勘定照合」「タスク管理」「突合処理」を提供。これに拡張する形で「仕分入力」「会社間取引管理」の機能も用意する。国内提供では、まず2019年に基盤機能を投入し、2020年以降に拡張機能を投入していく計画だ。
BlackLineが掲げるモダンファイナンスプラットフォーム
古濱氏によると、3年間で大企業を中心に100社の導入を目指す。製造・消費財・流通を当初のターゲットとし、サービスや金融などの業界などにも広げていく。監査法人とも強固なエコシステムを確立していくとしている。
2018年11月にはSAPとのグローバルでの戦略的提携を発表しており、S/4HANAとBlackLineを組み合わせた、モダンファイナンスの実現を目指している。
「日本でファイナンスオートメーション市場を確立し、パイオニアリーダーとして市場の成長をけん引していきたい」(古濱氏)
日本法人の代表取締役社長に就任した古濱淑子氏