ネットスイート、「SuiteWorld 2019」を開催--今年のテーマは「Grow Beyond」

藤本和彦 (編集部)

2019-04-03 09:22

 Oracleの傘下でクラウドERPを提供するNetSuiteは4月1~4日にかけて、年次カンファレンス「SuiteWorld 2019」を米国ラスベガスで開催している。2019年のテーマは「Grow Beyond」。成長企業がさらに伸びるための取り組みが多く語られている。会期中にはおよそ7500人のユーザーとパートナーが来場。2日の基調講演では、Executive Vice PresidentのEvan Goldberg氏が数多くの導入事例を交えながら、同社の強みを訴えかけた。

NetSuiteでExecutive Vice Presidentを務めるEvan Goldberg氏
NetSuiteでExecutive Vice Presidentを務めるEvan Goldberg氏

 NetSuiteは、会計システム、統合基幹業務システム(ERP)、顧客関係管理(CRM)、Eコマースなどの業務アプリケーションを統合して提供するSaaS。中小企業やスタートアップ企業など、ITリソースを持っていない企業を中心に導入が広がっている。2019年4月時点で203カ国に1万6000社の顧客を抱えている。

 1998年に創業し、2016年にはOracleに買収されるなど、さまざまな状況の変化に直面しながらも、「顧客のビジョンの実現を支援すること」が創業以来の変わらない使命だとGoldberg氏は強調する。

 Goldberg氏は講演で、「NetSuiteの顧客はS&P 500企業の3倍の速度で成長している」とし、その成長の推進力として、Visibility、Control、Agility、Productivity、Collaborationの5つの要素を挙げた。今回は、Visibility、Control、Agilityの3点について言及した。

企業が成長するための5つの要素
企業が成長するための5つの要素

 「Visibility」については、「過去と現在、未来を見ることが重要」とGoldberg氏は話す。それによって、企業における盲点を顕在化させ、成長への道標を探ることができるという。そうした企業活動の可視性を高めるための仕組みとして、NetSuiteはビジネスインテリジェンス(BI)機能の「SuiteAnalytics Workbook」をベータ版で提供してきた。リアルタイムのレポーティングやデータ探索、主要業績評価指標(KPI)の確認が可能になっており、直近の2019.1リリースで一般提供を開始している。

SuiteAnalytics Workbookの機能強化
SuiteAnalytics Workbookの機能強化

 為替レートや原料価格の変動、人為的なミスなど、企業活動には多くの潜在的なリスクや不確実性がある。そうした問題の「Control」が企業の成長に必要だとGoldberg氏は指摘する。

 同氏によると、実際、76%の顧客が製品に関する為替変動に関心を抱いているという。グローバルに展開している企業にとって、為替の変動や税制の改正が収益に与える影響は非常に大きい。基調講演では、企業の税制対応を支援する「SuiteTax API」が発表された。

 これは、各国の税金のパーセンテージを自動で計算できるようにするもの。特に州単位で税制が異なる米国では重要とする。

 「どの企業もビジョンの実現に向けて一直線に進めるものではない」(Goldberg氏)。その中では、ビジネスモデルを変えたり、新たな市場を開拓したり、社会的な責任が大きくなったり、新たな技術を取り入れたり、さまざまな分岐点がある。そうした変化へ柔軟に対処するには「Agility」が重要になる。

 メーカーが消費者と直接やりとりをしたり、卸売業でありながら小売業のようにビジネスをしたりなど、新しいビジネスのやり方が出てきている。「ビジネスの形がますますあいまいになっている」という。基調講演では、そうした“オムニビジネス”と形容する状況をサポートするための機能群が紹介された。

オムニビジネスソリューション
オムニビジネスソリューション

 また、業界固有の機能要件や初期設計、設定導入などをプリセットで提供する「SuiteSuccess」を卸売業、製造業、ソフトウェア業向けに拡大したほか、「International SuiteSuccess Starter Editions」「International SuiteSuccess Financials First Edition」「SuiteSuccess for Planning and Budgeting」の各エディションを追加したことを発表した。

 基調講演の最後には、Oracleで最高経営責任者(CEO)を務めるMark Hurd氏がゲストで登壇した。全てのアプリがクラウドに向かうという方向性を示し、「SaaSでバックオフィススイートを開発している会社は(NetSuiteの)他にない。大きく差別化できる要素になっている」と強調した。

 「今後もNetSuiteに対する投資を続け、対応する業界や地域も広げていく。研究開発と販売員も増強している。ますます良い製品になっていくだろう」(Hurd氏)

Oracle CEOのMark Hurd氏(左)とGoldberg氏
Oracle CEOのMark Hurd氏(左)とGoldberg氏

 基調講演では、アメリカがん協会、VICE Media、Deloitte Digilal、Second City Worksといった企業がゲスト登壇し、NetSuiteを導入した背景や導入後の変化について明かした。

 例えば、非営利団体(NPO)のアメリカがん協会は、NPO活動の透明性を高めるために、NetSuiteを導入した。同協会は、がんに関する調査研究や患者支援、情報提供を活動の柱とし、資金のほとんどが企業や市民からの寄付で賄われている。

 利害関係者に対する透明性を確保するには、収支管理を徹底する必要があったが、当時の老朽化・断片化したITインフラでは限界があった。そのシステムをモダナイズ(近代化)することで、各プログラムの活動状況などを詳細に把握できるようになったという。

基調講演には俳優でコメディアンのJason Sueikis氏も登壇した。
基調講演には俳優でコメディアンのJason Sueikis氏も登壇した。

(取材協力:日本オラクル)

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