海外コメンタリー

企業におけるAI導入、真のコストとROIを把握するには - (page 5)

Mary Shacklett (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-04-18 06:30

 事例を1つ挙げてみると、ドイツに拠点を置き、香料や芳香化合物、食品成分などを取り扱う世界的な化学品メーカーのSymriseは、ブラジルのミレニアル世代(1980〜2000年初頭生まれの世代)の市場に向けた新たな香水を開発するためにAIを導入した。これらの香水は売り上げを伸ばし、新たな国への展開をも可能にした。しかし、Symriseの幹部であるAnton Daub氏によると、その実現までに2年近くを要したという。その2年はSymriseの調香師によるAIシステムの徹底的な訓練と、同社の保有するさまざまなデータをAIに与えるためのITシステムの高価なアップグレードに費やされた。

 AIシステムでは継続的な調整と訓練が必要であるため、どのようなAIプロジェクトにも「投機的な」要素が常に存在することになる。その理由は、人間の精神が予測できない(その結果、エミュレーションできない)ためだ。こうした不確実性は、AIにおけるどのようなROI算出式でも考慮しておく必要がある。AIの推進者は、上級マネジメント層がリスクを想定し、管理できるよう、あらかじめ理解を求めておくことができるはずだ。また、AIプロジェクトにおける未知の要素や予期しない事態に備え、プロジェクトのコスト見積もりに20%のマージンを確保し、ROI算出式にリスクを織り込んでおくということもできるだろう。

新たなシステムプロセスと業務プロセス

 自社へのAI導入によって、システムや業務プロセスに影響がもたらされる。AIと通信し、情報をやり取りしなければならないシステムは少なくとも、AIと統合されている必要がある。また、システムプロセスも当然ながら修正が必要となる。業務プロセスでのAI導入が進むにしたがい、それまで人間によって処理されていたプロセスがAIによって処理されるようになる結果、その処理の担当者は新たな、および/あるいは見直された職務を担当するようになる。業務プロセスのこうした見直しはROIを算出する過程で計画や訓練、考慮が必要となる。

AI

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]