インサイトテクノロジーは4月10日、データベース移行などの際に問題になるSQLの検出と修正を行えるソフトウェア新製品「Insight Database Testing」を発表した。SQLの書き換え作業などに要するコストを削減するという。
新製品は、移行元のデータベース(ソースDB)を使用するアプリケーションが使用しているSQLを自動的に収集し、収集したSQLが移行先のデータベース(ターゲットDB)で使用可能かどうかをテストしたり、移行前後でのパフォーマンスを比較したりできる。検出された使用できないSQLを移行先で使用できるように手作業で修正したり、あるいは外部の変換ツールを使って修正したりもできる。
「Insight Database Testing」で検出、調査したSQLの状況レポートのデモ
対応するソースDBは、Oracle Database 10g以上、PostgreSQL 9.3以上(EnterpriseDB:EDB Postgres Advanced Server、Fujitsu Enterprise Postgres、Fujitsu Symfoware Serverなどの互換製品を含む)、Microsoft SQL Server 2005以上、MySQL 5.5/5.7。同ターゲットDBは、Oracle Database 11g R2/12c/12c R2、PostgreSQL9.3以上(互換製品を含む)で、Microsoft SQL ServerとMySQLにも対応する予定。ベンダーが異なるデータベースの移行や、オンプレミスからクラウドへの移行といった際に利用できる。
記者会見した取締役兼CTO(最高技術者)の石川雅也氏によると、かつてのデータベース移行は同一ベンダーのバージョンアップ対応ばかりだったが、2016年ごろからベンダーの乗り換え、オンプレミスからクラウドへの移行といったケースが急増している。データベース移行で問題となるのは、データベース技術者の不足、アプリケーション開発時に作成したドキュメントの喪失などに加え、昨今では動的に生成されるSQLを抽出できないことにより、移行先環境に即したSQLの変換に膨大な工数とコストが発生するばかりか、そもそもそれらの見積り自体が困難という状況に陥っている。
インサイトテクノロジーが手掛けるデータベースの移行パターン。赤い矢印で示すパターンが特に多いという
同社は、1995年の創業時から強みとするデータベースのチューニングや鑑査対応などの技術とノウハウに加え、近年ではデータベースアプライアンスや人工知能(AI)による異常検知、予測といったソリューションも展開する。そうした中で主軸のデータベース領域では、移行の支援やコンサルティングのサービスを提供しているが、依頼案件の急増やSQL変換作業の負荷に対応し切れなくなってきたという。
「Insight Database Testing」の利用イメージ
新製品は、データベース監査ツール「PISO」の機能を要素技術として用いることで、本番稼働中のデータベースにほとんど影響を与えることなく、上述の機能を実行できるとしている。具体的な利用イメージは、オンプレミスのデータベースをAmazon Web Services(AWS)のリレーショナルデータベース「Amazon Aurora」へ移行する場合に、AWSが無償提供する「AWS Schema Conversion Tool」や「AWS Database Migration Service」でスキーマとデータを移行させ、Insight Database Testingで問題となるSQLの検出、修正、テストを行うというものだ。
「Insight Database Testing」で検出された問題のあるSQLをファイルとしてAWSのツールに取り込み修正することもできる
価格は、使用期間単位に応じた移行元データベースのCPUコア数当たりのサブスクリプションとなり、3カ月使用の場合は1コア当たり20万円から。例えば、8コア・2ノード(16コア)で稼働するOracle Database(RACの場合)からの移行で3カ月利用する場合は320万円になるという。
今後の開発では、移行先データベースでSQLの実行結果の整合性をチェックする機能やSaaS対応、Attunityのデータ統合機能と連携したデータ移行支援策などを計画。石川氏は、最終的に「異なるデータベースの移行を全て自動化できるようにしたい」と話している。
なお、同社では、2018年8月に最初の日本オラクル代表やサンブリッジの創業者として知られるアレン・マイナー氏が代表取締役社長兼CEOに就任した。会見でマイナー氏は、「インサイトテクノロジーは日本オラクル時代から関わりの深い会社だ。現在の企業はデータからのインサイト(洞察)の獲得を重視しており、(インサイトテクノロジーの)会社名にも先見の明がある。こうした思いを背景に、われわれはインサイトを導く専門集団として顧客に尽力していきたい」と表明した。
インサイトテクノロジー 代表取締役社長兼CEOのアレン・マイナー氏。初代の日本オラクル代表として20年以上前から同社とのつながりがある