人員減でも定時退社--昭和リースがROI「560%+α」のRPA基盤を構築するまで - (page 2)

鈴木恭子

2019-04-19 07:00

 ライセンス体系では「柔軟性」を重視。その理由について藤本氏は、「Blue Prismは本番環境で同時に実行するロボット数に対して課金する。われわれが同時稼働させるロボットは最大でも5台なので、5ライセンスを購入すれば十分だ。この(ライセンス)金額で、100台のデスクトップ(PC)も稼働させられるため、(デスクトップ型よりも)“お得”だと判断した」と説明する。

昭和リースのシステム構成(概念図)
昭和リースのシステム構成(概念図)

ビジネス部門担当者でも内製化は可能

 Blue Prismの導入にあたっては、構築と運用を担うオペレーション企画管理部から3人、IDを管理するインフラ・サービス部から1人、社内常駐のITベンダーから3人を配した。いずれも“本業”と兼務だ。

 なお、オペレーション企画管理部のメンバーは一般社員で、「プログラミングのノウハウはない人材」(藤本氏)だったという。そのため、パートナー企業が実施する2日間の基礎研修と8時間の追加研修を受けてRPAの基礎を学んだ。藤本氏は「パートナー企業とは毎週進捗会議を開き、研修では対面でサポートしてもらった。RPAは構築が難しく開発者の育成が大変だという声も多いが、一般の社員でも内製化は十分に可能だ」と説明する。

 2019年1月末時点で、昭和リースでは56業務で198のシナリオ(ロボット)が稼働し、年間2万2531時間の処理を自動化している計算だ。RPAの導入でバックオフィスの人員を70人から50人に削減したものの、「担当者全員が定時退社できている」(藤本氏)という。

 昭和リースの導入効果は明確だ。人手では83人で1カ月間(1日8時間労働×20日×83人=1万3300時間)かかる作業をわずか4人で2週間の作業で完了させている。

 「1人あたりの年収が500万円だとすると、年間2万2531時間の処理には約7000万円かかる。一方、RPAの導入や運用にかかる諸経費は約1250万円だ。この差額でROI(投資対効果)を計算すると560%+αになる」(藤本氏)

 とはいえ、導入から運用まで、すべてのプロセスが順風満帆だったわけではない。実際に稼働させて初めてわかったこともある。それは、「ロボットとシステムの違い」だ。メインフレームで稼働するシステムは安定かつ、高速処理が当たり前だ。

 しかし、それがあだになり、ロボットが処理を認識できないケースもあった。また、画面サイズを変更すると画像認識でしか連携できない業務システムは不安定になり、結果的に連携が途絶えることもあったという。

 こうした課題に対して藤本氏は、「連携の度合いを確認しつつ、微調整をする必要がある。エラーを記録して確実に問題を解消していくことが重要だ」との見解を示した。

 同社では今後、RPAの対象業務範囲を拡大していく方向で検討しているという。Blue Prismには人工知能(AI)や機械学習(マシンラーニング)、自然言語処理や光学文字認識(OCR)といった機能をマーケットプレイスからダウンロードして自社のRPAに組み込める「Blue Prism Digital Exchange」が備わっている。今後は、これらの機能を組み合わせて、手書き書類の処理やAIによる判断業務の代行といった使い方も検討中だとのことだ。

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