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NTTデータ、2019年度めどに情報銀行基盤を実用化へ

藤本和彦 (編集部)

2019-05-17 12:15

 NTTデータは5月16日、情報銀行を取り巻く国内外のビジネス動向について報道機関向けの説明会を開催した。同社では、2019年2~3月にかけて個人情報(パーソナルデータ)の流通に関する実証を行い、その結果を踏まえて2019年度内をめどにプラットフォームサービスの実用化を目指している。

 昨今、個人情報は“第2の石油”と呼ばれ、「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」をはじめとする米国企業や、「BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)」などの中国企業が膨大な量の個人情報を収集・取得し、製品やサービスの開発・改良に生かしている。そうした中、個人情報をビジネスに生かそうという機運が世界中で急速に高まっている。

 日本では、内閣府・総務省・経済産業省を中心にパーソナルデータに関連する制度の設計と推進が行われている。2018年6月には、総務省・経産省が情報信託機能(いわゆる情報銀行)に関する民間団体などによる任意の認定制度の在り方についての検討結果を「情報信託機能の認定に係る指針 ver1.0」として取りまとめ、公表した。

 同指針は「認定基準」「モデル約款の記載事項」「認定スキーム」で構成され、認定を行う民間団体などは、この指針に基づいて認定制度を構築・運用することになる。

 情報銀行の主な役割は、個人とのデータ活用に関する契約などに基づき、システム基盤を活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示やあらかじめ指定した条件に基づいて個人に代わり妥当性を判断した上で、データを第三者に提供することにある。

 例えば情報の提供者は、提供先の事業者からよりパーソナライズされたサービスを受け取ることができるといったメリットがある。また、企業はこれまで、Cookie情報やデータ管理基盤(DMP)の匿名データから推計したプロファイル情報をもとに広告配信などを行ってきたが、パーソナルデータを使って実際のユーザーにアプローチできるようになれば、マーケティング戦略に大きな変化をもたらす可能性がある。

 情報銀行で中核となるのが「パーソナルデータストア(PDS)」という仕組みだ。NTTデータ 金融事業推進部 デジタル戦略推進部 花谷昌弘氏によると、これは他者が保有するデータの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するためのシステムで、第三者への提供に関する制御機能を有している点が特徴という。

金融事業推進部 デジタル戦略推進部 花谷昌弘氏
金融事業推進部 デジタル戦略推進部 花谷昌弘氏

 「事業者は、自社が提供するサービスや関連したユーザーデータを分散的に収集・所有しているが、事業者単体で収集できるデータには限界がある」(花谷氏)と指摘し、データ流通基盤としての情報銀行の意義を訴えかけた。

 また、情報銀行について、現在市場に公開されているビジネスの種類は、(1)広告業、(2)企業主体の連携、(3)本来の情報銀行――に分類されるという。

 (1)はより正確な個人情報に基づき、ペルソナを作成し、高度なワンツーワンマーケティンを実現するもので、電通テックの「MEY」などがこれに当たる。(2)は個人情報の囲い込みを維持しながら、データ活用による新しいビジネス創発を目指すもの。セブン&アイ・ホールディングスの「セブン&アイ・データラボ」や東京電力の「グリッドデータラボ」などがある。(3)は個人に個人情報を管理する権限を委ね、許諾を受けながら個人情報を提供するもので、三菱UFJ信託銀行が「DPRIME」を展開している。

 一方で、情報銀行の課題としては、(1)データ保有企業がデータを提供するためのインセンティブ、(2)個人または情報銀行がパーソナルデータを引き出すための技術、(3)個人がパーソナルデータを提供したくなるようなデータ活用サービス――が必要になるとする。

 その中でも、パーソナルデータを引き出すための技術として、データの正規化やデータの真正性、本人確認、ファイルフォーマット、セキュリティーといったことを念頭に置いた仕組み作りが求められる。

データ流通/活用を取り巻くプレーヤー データ流通/活用を取り巻くプレーヤー
※クリックすると拡大画像が見られます

 世界に目を向けると、特に欧州でパーソナルデータについて積極的に検討されており、フランスでは保険会社や通信会社を巻き込んだ実証実験が行われている。また、中国では、信用スコアが一定の水準以上のユーザーを対象に、Alibabaが自動車の自動販売業務を始めている。自動販売機を活用することで無人化による大幅なコスト削減を可能にし、中国の富裕層に人気が高い高級車やスーパーカーなどを廉価に提供するサービスになっている。

 「パーソナルデータ流通とは、個人の信用を流通させることであり、商品を購入することは、顧客データを提供して、企業を育成することにつながる。それによって企業との関係が変わり、地域が変わり、働き方が変わる」と花谷氏は説明する。

 NTTデータでは、2019年2月18日~3月26日にかけて、個人モニターを募って実際のパーソナルデータを用い、データ流通の利便性や安全性を検証した。一般のモニター参加者が氏名、住所、生年月日、性別などのパーソナルデータを仮想のPDSに登録し、仮想のデータ活用事業者とのパーソナルデータの連携に同意するまでの流れを体験してもらった。その後、その内容などについてアンケート調査を実施した。実証実験には713人が参加した。

 アンケート結果によると、「かなりの割合の人が目的やメリットを理解していることが分かった」(社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 江島正康氏)。また、安全性や利便性、金銭的対価が担保されるなどの条件付きで一定の利用ニーズがあり、本人同意についてはちゃんと内容を理解して同意している割合が多かったと振り返る。

社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 江島正康氏
社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 江島正康氏

 プラットフォーマーへの信頼度については、「金融機関やインフラ系企業など伝統的な企業への信頼度や期待度が大きく、ベンチャー企業やIT企業などへの信頼度は大きくなかった」(江島氏)

 その他、情報提供先からの情報漏えいを危惧する声や、無料での利用をイメージする割合も多かったとしている。

 今回の実証を通して、「プラットフォームの基本的な機能とユーザービリティーの検証を行い、課題の抽出とノウハウの蓄積ができた」(花谷氏)。現在はこうした課題の解決策の具体化と新たな実証事業などによる追加の検証を検討中で、並行して商用化に向けた連携先事業者などの調整を進め、2019年度内をめどにプラットフォームサービスの実用化を目指すとしている。

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