仮想化バックアップベンダーのVeeam Softwareは米国時間5月21日、フロリダ州マイアミで年次カンファレンス「VeeamOn 2019」を開催した。テーマはVeeamの「第2章」。年間売上高が10億ドルを超えたことを報告するとともに、次の戦略として「ハイブリッドクラウド」時代に向けたデータ管理というフォーカスを打ち出した。
Veeamは大きな変革期を迎えている。2018年秋に、成長を牽引してきた共同CEO(最高経営責任者)のPeter McKay氏が退任し、共同創業者のAndrei Baronov氏がCEOになった。今回のVeeamOnでは年間受注額が10億ドルを達成したことを発表した。
基調講演を行った共同創業者兼セールス&マーケティング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのRatmir Timashev氏は、「6年前に、5年後に10億ドルを超えると予想していた。サブスクリプションが増えて収入形態が変化したために若干の時差があるものの、ほぼ予想通りに達成できた」と胸を張る。そして、「純粋なソフトウェア企業で10億越えは34社しかない」と続けた。顧客数も増えて、35万に上り、新規顧客は毎月4000というという。

共同創業者兼セールス&マーケティング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのRatmir Timashev氏。前CEO退任後、表の顔を務めている
新体制の下で進めるのは「第2章」に向けた戦略だ。それは、Veeamを取り巻く業界の変化も関係している。「10年ごとに訪れる変化の時期にある」とTimashev氏は述べ、変化のキーワードとしてVMwareのCEO、Pat Gelsinger氏が“技術のスーパーパワー”とするクラウド、モバイル、人工知能(AI)/機械学習、エッジ/IoTだ。Veeamは過去10年、VMware仮想マシンにフォーカスすることで急成長を遂げたが、技術トレンドの変化に合わせて次なる成長戦略を敷いている。具体的には、「ハイブリッドクラウド」だ。
Veeamによれば、顧客の73%が「ハイブリッドクラウドアーキテクチャを構築中」だとし、オンプレミスのみを使い続けるところは10%以下、「完全にパブリッククラウドに移行する」と回答した企業は15%以下という。「どの顧客と話しをしても、ハイブリッドクラウドへの移行に話が及ぶ」(Timashev氏)
市場規模は大きく、Timashev氏は150億ドルとの予想を示しながら、「ハイブリッドクラウドにおけるデータ管理とデータ保護は次の大きなチャンスだ。Veeamにとっても、Veeamのパートナーにとっても大きい」と述べた。
製品側では、「Veeam Availability Suite」が中心となる。「物理、仮想、SaaS、クラウドなどの上で動いているあらゆるワークロード向けにバックアップソリューションを提供する。Veeamは最も包括的で成熟したプラットフォームを持つ」とTimashev氏は述べた。

主力製品「Veeam Availability Suite」はデータ管理のプラットフォームとして重要になる。
プラットフォームに加えて、Veeamはストレージ、ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)、パブリッククラウドと、さまざまな分野に及ぶエコシステムを構築している。これをさらに強化するものとして、VeeamOnではセカンダリーストレージ向けの「with Veeam」プログラムを発表した。
これは、ストレージハードウェアベンダーがVeeamと共同でアプライアンス型のソリューションを提供するもので、既にNutanixが「Nutanix Mine with Veeam」を、ExaGridが「ExaGrid Backup with Veeam」を発表済み。今後はこれを幅広いベンダーに採用してもらう計画で、「Veeam API for Secondry Storage」と「Universal Storage API」を提供するという。
「ストレージとデータ管理はそれぞれ多くの投資がなされ、イノベーションが進んできた。この2つが一緒になると、最高のソリューションが生まれる」とTimashev氏。6~7年前からプライマリーストレージで進めた統合をセカンダリーでも行っていくとした。VeeamのUniversal Storage APIを利用するパートナーは20社以上を数えるという。

ストレージのエコシステム戦略
この他に「第2章」に向けた動きとして、ライセンスを柔軟にし、クラウド、仮想マシンなどの間を移動しても追加の課金がないライセンスポータビリティーを導入したことも報告した。同日、ディザスタリカバリーの「Veeam Availability Orchestrator v2」を発表している。
Timashev氏は、「成功する企業は第1章の後、第2章を見出し、そこで成長する必要がある」とし、正しい製品、正しいタイミング、そしてエコシステムにより成功できるとした。