ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長兼バイスプレジデントの古館正清氏
ヴィーム・ソフトウェアは2月27日、報道機関向けの事業戦略説明会を開催した。2017年12月に執行役員社長兼バイスプレジデントに就任した古館正清氏は、国内での事業拡大に向け、「5年以内にシェアトップを目指す」と表明した。
就任に際して古館氏は、同社事業について説明を聞く中で、同社事業の特徴が「バックアップというよりはアベイラビリティ(可用性)」であり、「しばらく目立った革新がなかったデータ保護分野で、ヴィームのソリューションが国内ユーザー企業のシステムのアベイラビリティを大きく変えることができるのではないかと考えた」と、参画までの経緯を紹介した。
続いて同氏は、ユーザー企業が抱える課題として「バックアップを取っているが、リストアに失敗する例がかなり多い」を指摘。また、「東日本大震災を契機としてバックアップやディザスタリカバリ(DR)の体制について真剣に考えたユーザー企業は多いが、大抵はそれ以降に見直す機会がないまま放置されているのではないか」とも語った。その上で“次世代のデータ保護プラットフォームの要件”として、「標準化」「可視化」「自動化」の達成が必要だとし、同社のソリューションでそれが達成可能だとしている。
ヴィーム・ソフトウェアのソリューション方針(説明会資料より)
Veeam Software アジア太平洋日本担当 グローバル・クラウド・グループ・シニア・ディレクターのAsanga Wanigatunga氏
Veeam Softwareのアジア太平洋日本担当 グローバル・クラウド・グループ・シニア・ディレクターのAsanga Wanigatunga氏は、「ハイブリッドクラウドの未来に向けたVeeamの戦略」について説明。コンピューティングの技術面でのトレンドが、物理、仮想、クラウドホスト、クラウドネイティブと移るのに対し、同社では仮想環境にフォーカスすることで成長したとしたと述べた。その上で今後の戦略に、「ハイブリッドクラウドへの取り組み」を挙げた。
同社の言うハイブリッドクラウドとは、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウド、SaaSなど、さまざまな環境を併用するモデルを指し、こうしたヘテロジーニアス(異種混在)な環境に対して、“単一の可視化機能(Single Visibility)を提供する”ことを目指しているという。バックアップ/リストアが複数の環境をまたぐことも想定し、オンプレミスのシステムのバックアップをクラウド上にリストアする、あるいはその逆、またはあるパブリッククラウド上で稼働するシステムのバックアップを別のクラウドでリストアするといった運用を、統合的なインターフェースで実現していくというビジョンを語った。
同時に、Veeamは既に中堅中小企業向け市場でリーダーポジションにあり、今後はエンタープライズ市場でのシェア獲得に注力するとの方針を示した。その具体的な取り組みとして、「N2WSの買収」および「AIXおよびSolarisのサポート」についても説明した。
N2WSの買収は既報の通りだが、Amazon Web Services(AWS)環境向けのデータ保護/DR大手プロバイダーであるN2WSを買収することで、クラウド環境への対応を強化した。また、AIXおよびSolarisのサポートは、エンタープライズユーザーの中にはまだこれらのプラットフォームで稼働するシステムを残している例があるためだという。これらの環境もサポートしない限り、ユーザー企業としてはVeeamのデータ保護プラットフォームで統一するということはできず、運用負荷を軽減できないことから、導入障壁という認識を踏まえて対応拡大に踏み切ったものだ。
また、新製品の「Veeam Availability Orchestrator」の提供も発表された。DR向けの自動化ソリューションとなり、DRおよびコンプライアンスの計画立案、テスト、ドキュメント生成自動化などの機能を備える。古舘氏が指摘した「リストアに失敗する例が多い」という理由の1つに、テストのための環境を準備し、テストを行うことが極めて困難という状況がある。Veeam Availability Orchestratorは、テスト機能を含む高度な自動化機能によってこうした負担を軽減する。
日本市場の事業戦略(説明会資料より)
グローバルでのVeeam Softwareの目標では、2020年に売上規模を16億ドルとし、データ保護ソフトウェアのトップベンダーとなることを目指している。一方、古舘氏はグローバルと同じペースは難しいとの認識を示し、国内では5年以内にトップになることを目指すとした。