シスコシステムズは5月30日、新しい無線LAN規格「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」の対応状況に関する説明会を開催した。同日付で無線LANアクセスポイント(AP)製品「Cisco Catalyst 9100シリーズ」と「Cisco Merakiアクセスポイント MR45/MR55」でのWi-Fi 6への対応と、APからのトラフィックを受けるWi-Fi 6対応のコアスイッチ製品「Cisco Catalyst 9600シリーズ」を発表した。
今回発表したシスコのWi-Fi 6対応の概要
概要を説明した執行役員 エンタープライズネットワーキング事業担当の眞崎浩一氏は、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代を迎えて企業がIT/新技術を活用した新規ビジネスの創出に急ぎ取り組んでいる状況を踏まえ、ITインフラについても、こうした新規ビジネスを支える基盤としての要件を満たせるよう再考する必要があると指摘した。
シスコシステムズ 執行役員 エンタープライズ ネットワーキング事業担の眞崎浩一氏
また、セルラーネットワークで「5G(第5世代移動体通信システム)」、無線LANでは「Wi-Fi 6」のいずれもが市場投入が間近となっている状況について、5Gは主に野外での利用が想定され、かつトラフィックの制御などのネットワークの詳細なコントロールはキャリアが行うことが想定される一方、Wi-Fi 6はオフィス内などでも活用でき、詳細な位置情報なども活用でき、トラフィックの可視化や精緻なコントロールなども可能になるなど、両者の共存を想定しているとした。
なお、本格的な普及時期に関しては、Wi-Fi 6が2019年内にも製品が出そろい始め、2020年には本格的な普及が開始されると予想される。一方、5Gのグローバルでの本格的な普及は2021~22年頃と予想されていることから、まずはWi-Fi 6の市場が立ち上がるとした。同社は、ビジネスの目的を把握するネットワーキング技術として「インテントベースネットワーキング」を推進しているが、ここに「マルチドメインアーキテクチャー」が組み込まれることで、5GでもWi-Fi6でも全てを組み合わせて共存可能としていくという。
Wi-Fi 6と5Gの共存イメージ
また、同社のエンタープライズ向けネットワーキング製品の中でも「看板商品」と言える位置付けの「Cisco Catalystスイッチ」については、最新の9600シリーズの投入によって「ラインアップが完成した」(眞崎氏)という。従来は別ブランドで提供されていたワイヤレスAP製品も今回Catalystブランドに統合されたことで、キャンパスネットワークをエンドツーエンドでCatalystシリーズによって統合できるようになった。
Catalyst 9000シリーズのモデルラインアップ
続いて、無線LAN AP製品の詳細をエンタープライズネットワーキング、シニアプロダクトマネージャの前原朋実氏が説明、Wi-Fi 6を「10年振りの大幅な技術進化」と位置付けた上で、最新のワイヤレスネットワークをすぐに使い始められることのメリットを強調した。なお、Wi-Fi 6はまだ正式な規格化に至っていないドラフト段階にあり、現在は仕様のデバッグ作業が進行中というフェーズにある。このことから同社は、Wi-Fi 6関連製品を開発中の各社と連携し、エコシステムにおけるリーダーシップとして互換性検証などの作業を進めているほか、Wi-Fi 6を公衆無線LANサービスとして活用する際の利便性向上が期待される「OpenRoaming」についてもコンソーシアムを立ち上げるなどの取り組みを行っているという。
シスコシステムズ エンタープライズネットワーキング、シニアプロダクトマネージャの前原朋実氏
なお、無線LAN APはオフィス内などのユーザーの目に触れる場所に設置されることが多いことから、新しいCatalyst 9100シリーズ APでは、コンパクトデザインを実現するために外観から再デザインし、デザイン作業はイタリアン・スーパーカーのデザインを数多く手がけたことで著名なイタリアのカロッツェリア「Pininfarina」が担当したという。
Cisco Catalyst 9100シリーズアクセスポイントの概要
説明会後の質疑応答で眞崎氏は、「米国本社としては規格が正式に固まってから製品を出したかったのではないかと思う」と述べ、ドラフト段階での製品投入は、同社として必ずしも望んでのことではなかったようだ。実際に対応端末などのラインアップがまだそろっておらず、規格が正式化された時点ではファームウェアアップデートなどの対応作業も必要になる可能性があることから、現時点でWi-Fi 6対応製品を積極的に導入する意味はベンダー側にもユーザー側にも、あまり大きくはないだろう。
Wi-Fi 6は、まず機材更新タイミングなどの関係で正式規格のリリースまで待つのが難しいユーザーなどから導入がスタートすることになりそうだ。