能楽協会と富士通は7月18日、ITを活用した能楽の魅力発信に向けてパートナーシップ契約を締結したと発表した。
能楽は近年、外国人観光客の増加などにより海外での評価が高まっている。能楽協会は現在、能楽の魅力を広めるため、さまざまな人が楽しめる公演形態や積極的な情報発信を目指しているという。
一方富士通は、スポーツ団体などに対してライブビューイングの提供や、ファンの属性・来場データの一元管理・分析、スマートフォンアプリとのデータ連携などを行っている。
両者は2018年1月、能楽協会が主催したイベントで富士通のダイバーシティコミュニケーションツール「FUJITSU Software LiveTalk」を用いて講演のリアルタイム翻訳を実証。この取り組みがきっかけとなり、今回のパートナーシップ契約締結に至ったという。
両者は7月31日と8月4日に開催される「ESSENCE能 見どころ!ぎゅっと凝縮・能楽アンソロジー」(ESSENCE能)で、ユーザーインターフェース「Ontenna」とヘッドマウント型ディスプレイ「RETISSA Display」を用いて、聴覚障がいのある人や外国人観光客を含む多様な観客に鑑賞体験を提供する。
Ontennaは富士通、RETISSA Displayは半導体レーザーを手がける企業QDレーザが開発した。ESSENCE能の公演は「バリアフリー対応」「多様性」「幽玄」「多言語対応」の4つのテーマで行われ、バリアフリー対応と多言語対応の公演に富士通が関わっている。
Ontennaは、髪の毛や耳たぶ、襟元、袖口などに付けると振動と光によってリズムなどの音の特徴を感じられる。言語に依存しないことから、より多くの人に能楽の魅力を伝えられるという。Ontenna は、7月31日に行われるバリアフリー対応の公演で実証される。
Ontenna(出典:能楽協会、富士通)
RETISSA Displayは、眼鏡のように装着すると英語字幕が網膜に直接投影され、視線を移すことなく舞台の演技と同時に見られる。超小型プロジェクターがフレーム内側に搭載されており、微弱なレーザー光で網膜上をスキャンすることで網膜に直接映像を投影する技術が用いられている。RETISSA Display は、8月4日に行われる多言語対応の公演で実証される。
RETISSA Display(出典:能楽協会、富士通)
両者は2020年7~9月に開催予定の「東京2020オリンピック・パラリンピック能楽祭」に向けて、ITを活用した情報発信や顧客データの利用、チケット販売時の利便性向上、新たな鑑賞体験の提供を推進していくという。