エクイニクス・ジャパンは7月22日、東京都心部に新たなデータセンター「TY11」を開設したと発表した。同社がグローバルに展開する「IBX(International Business Exchange)」データセンターで、日本は最大規模となる。段階的に拡張する予定で、第1フェーズでは950ラック、約3700平方メートルのコロケーションスペースを提供、最終フェーズの完了時には3500ラック以上、約1万4300平方メートルのコロケーションスペースとなる計画。なお、第1フェーズでの投資額は7000万ドル(約79億円)という。
概要を説明した代表取締役兼北アジア統括の古田敬氏は、まず同社の社名の由来を「Equality(平等なアクセス)」「Neutrality(中立性)」「Internet(インターネット)」「eXchange(エクスチェンジ)」と、自社のビジネスを「Inter Connection(相互接続)とData Centerの会社」と位置付けた。
エクイニクス・ジャパン 代表取締役兼北アジア統括の古田敬氏
現在、同社がグローバルで展開するIBXデータセンターは世界5大陸、52都市で200カ所以上だといい、中でも東京は「データセンター市場としてみた場合、単独の都市として東京が世界最大」(古田氏)であることから、積極的な投資を継続しているという。古田氏はデータセンター関連のビジネスで20年のキャリアがあるといい、その20年の経験に照らしても、現在の東京圏でのデータセンター需要の盛り上がりに関して「この1年ぐらいの波というのは、ちょっと今までにないほどだ」と語った。
TY11は、既設の倉庫の建物を活かして内部の改修で作られている。湾岸エリアの有明地区にあるが、周囲は大規模なマンションなどの建築ラッシュ状態であり、完成後の運用フェーズでは「住宅街の一角」といった状況になることが想定され、壁面緑化を行うなど、周辺環境への配慮がなされている。
基本的な仕様は、世界の全てのデータセンターを可能な限り同一の仕様でそろえるという同社の基本方針もあり、突出したものではなく、都市型データセンターとしては標準的なものになる。だが、「“ちりも積もれば”的な効率化の積み上げ」(古田氏)の結果として、建物全体の床面積に対するコロケーションスペースの比率が高く、スペース利用効率に優れているという。
コロケーションスペースは、フリーアクセス床(床下高80センチ)で、冷気を床下から吹き上げ、コールドアイルのキャッピングを行い、暖気は屋内に解放して壁面の冷却器に流す構造になる。ラック当たりの最大電力量は3~4kVAを想定する。なお、非常用電源設備として通常国内で見られるガスタービンではなくディーゼルエンジンを採用し、コストメリットを得られるという。ガスタービンの方が設置スペースは小さく済むが、運転時の燃料効率はディーゼルの方が高い上、起動から発電を開始するまでの時間もディーゼルの方が短いという。
ネットワーク面では、80以上のネットワークサービスプロバイダーと直接接続する同社のデータセンター「TY2」に加え、Amazon Web Service(AWS)やGoogle Cloud、IBM Cloud、Microsoft Azureといったクラウド事業者、Teradataを含む国内285以上のクラウドおよびITサービスプロバイダーと直接接続を行っている同「TY4」ともダイレクトに接続される。これにより、既に満床に近い状態になっているTY2やTY4へのニーズをTY11で肩代わりすることも想定している。
同日の説明会では、湾岸エリアで津波が懸念されるとの指摘に対し、「津波はさまざまなリスクの1つに過ぎず、他の要素やビジネス的なメリットとのバランスで選択した結果」(古田氏)としている。同氏によれば、日本では海底ケーブルの揚陸地点とのバランスなどもあって、歴史的に千代田区大手町を中心としてネットワークの整備が行われてきた経緯がある。同社の既設のデータセンターでもTY2やTY4を中心にネットワークが集約されている。
このため、都心に隣接していることや、湾岸エリアの中でも比較的標高が確保されていることによる津波に対する安全性を考えた結果、離れた山間部にデータセンターを開設することは、メリット/デメリットのバランス上でも、今回の場合は適切ではないとの判断だという。