AIがもたらす衝撃は領域で異なる--AI科学者が語る第3次AIブームの今 - (page 2)

阿久津良和

2019-08-06 06:45

 現在のコンピュータービジョンと人を比較すると、1つのオブジェクトを提示すれば、容易に類似したオブジェクトを認識する柔軟な脳を持っている。つまり、AIを教育するために必要なデータ量をどれだけ削減できるか、研究の方向性を示す1つのアプローチとなるだろう。

 前述した医療画像を例にすれば、医者は複数のX線画像を見比べて、がんの存在を説明しなければならない。現在のAIは説明能力を改善し、人間の信頼を獲得する必要があると考えている。

AIビジネスの勝者は誰か

――多くのAI研究者やビジネスリーダーが「AIの透明性」「バイアス」といった課題を掲げている。直近でもG20大阪サミットで「人間中心の『AI』」が採択された。つまるところ、人とAIの関係性に多くの人々が懸念を持っていることの証左である。最初の質問に類似してしまうが、AIが悪用される可能性があるのではないのか。

 さまざまな政府や研究機関、ビジネスパーソンが「AIは単なるツール」と認識し始めているのは良い傾向だ。ツールであるがゆえに利用者に悪意があるのか、もしくは良心的なのかに応じて結果が変化することに気付いている。幅広い領域でAIが使われて始めているため、間違った使われ方をする可能性を認識することが重要だ。

 AIコミュニティーは、2つの観点からAIシステムの保護へ積極的に取り組んでいる。

 1つ目は悪意を持った攻撃からシステムをどのように保護するか。たとえばハッカーがデータソースを改ざんし、システムの誤動作をうながす攻撃からの防御方法。2つ目はシステムの脆弱性を常に探す作業。手動で脆弱性を探索するハッカーよりも素早く発見し、システムを新しいバージョンへアップグレードできる。

――大手IT企業が長年にわたってAIに注力してきた。MicrosoftはMicrosoft ResearchにあったAIチームを事業部化するとともに、GoogleやIBMなども同様の動きを見せている。Min氏の私見で構わないので、AIビジネスの勝者はどこになるか。

 チャレンジングな質問だが、Microsoft AI and Research Groupについてはコメントできる。研究部門において素晴らしい研究を続け、そのイノベーションを商品に適用してビジネス課題を解決してきた。

 だが、研究とビジネスの間には大きな隔たりがある。だからこそAI and Research Groupのように研究チームとビジネスチームを連携させるのは良い動きだ。似た戦略はGoogleやAmazonも採用している。大手IT企業は(研究とビジネスの)ギャップを認識し、どのようにギャップを埋められるか検討していると思う。

――では、AIビジネスの勝者になるためのカギは何だろうか。

 2つのカギが存在する。

 前述の回答と重複するが、イノベーションを製品に転換させるプロセスのスピードアップがカギを握っている。商品開発が需要にフィットし、ビジネスインパクトを獲得することがAI事業に投資するIT企業に取って重要だ。

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