AIがもたらす衝撃は領域で異なる--AI科学者が語る第3次AIブームの今

阿久津良和

2019-08-06 06:45

 人工知能(AI)を活用したカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「AIQUA(アイコア)」などのAI関連技術を台湾から発信するAppier(エイピア)。2018年7月26日にImageNetプロジェクトに参画、「Microsoft Kinect」の人間姿勢推定システム研究に携わってきたMin Sun氏がチーフAIサイエンティストとして就任した。Sun氏は、過去3年間に主要なAI学会で22本の研究論文を発表、2つの米国での商標を保有している。Sun氏へAIにまつわるいくつかの課題について話を聞いた。

領域で異なるAIの活用方法

――日本でもAIはハイプサイクルで言うところの幻滅期を迎えており、初歩的なビジネス活用が進みつつある。AIによるアウトプットが、今後のテクノロジーやビジネスを左右する存在だと認識しているが、この意見に対する是非を含めて、今後のAIの研究や開発がどの方向に進むべきか。

 AIは非常に幅広い分野で活用される可能性があるものの、よく知らない方々が間違った形で使ってしまうリスクも含んでいる。幻滅期に差し掛かっているという質問だが、領域によって異なるだろう。たとえばデジタルマーケティング領域においては、高い次元のデータが存在し、結果として広告のパフォーマンスにつながる。

 医療診断を例にすれば、AIが下した診断の理由を医者は知らなければならない。また、医者もしくはAIシステムが診断結果に責任を負わなければならない。医療領域とデジタルマーケティング領域と比較すると、現時点で大きなインパクトは得られていないように思う。

 流通領域においては画像認識技術を使うことで、誰が店舗に入店したのか、どの商品を手に取って(購入を)検討したのかを可視化できる。データのデジタル化はAIシステムの拡充に直結するため、店舗における高価値の顧客を明確にすることで、店舗やビジネスオーナーにおける高い価値を提供可能になるだろう。

――今の話を踏まえて聞きたいのが、進化の方向性。AIに取り組む研究者は多く、研究分野も多岐にわたる。分かりやすい例を交えて進化の方向性を聞きたい。

 過去を振り返ると、60年ほど前にAIの研究が始まったが、当時は人間と同じくらいインテリジェントなシステムをゴールに掲げていた。たとえばコンピュータービジョンの成果は素晴らしいものだが、それを活用したソリューションはまだまだ制限がある。なぜならコンピュータービジョンは1000以上のオブジェクトを人と同じ精度で認識しているが、それ以上を求めるには、より大量のデータが必要になってしまう。

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