火事や停電、地震、ハリケーン、台風、竜巻といったものは、データセンターに障害を引き起こす可能性のある一握りの出来事にすぎない。そういった出来事が過ぎ去った後に(あるいは、過ぎ去る前に)、IT部門は障害復旧に取り組み、すべてを元通りにする必要がある。ここでバックアップが活躍することになる。
しかし、使用しているデータセンターを襲った災害が、局地的ではない場合には、どうすればよいのだろうか?あるいは、クラウドプロバイダーの運用が突然停止したり、データが格納されている仮想マシンが損傷した場合にはどうすればよいのだろうか?必要不可欠な数々のデータが未来永劫(みらいえいごう)に失われるという、破滅的なシナリオに突入してしまうかもしれない。
(ローカル環境であるかクラウド環境であるかに関わらず)バックアップという名の1つのカゴにすべての卵を盛ってしまうと、障害復旧作業自体がその単一のバックアップに全面的に依存してしまうことになる。
では、障害復旧計画を確実に遂行するには、どうすればよいのだろうか?答えは、バックアップをウェブのさまざまな場所に、すなわち複数のクラウド、そして複数の場所に保管しておくことだ。
要するに、マルチクラウドによる障害復旧計画が必要となるわけだ。
マルチクラウドによる障害復旧とは?
マルチクラウドによる障害復旧の最も基本となる部分は、複数のクラウドプロバイダーと契約し、データのバックアップを取得するということになる。多くの企業は、必要不可欠なデータをGoogleやAmazon Web Services(AWS)といった複数のプロバイダーのクラウド上に格納しておくだけでマルチクラウドによるバックアップを実現できるはずだ。
Googleのような大手クラウドプロバイダーは、「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)といった他のプロバイダーが運用するクラウドからの自動バックアップ機能も提供している。これによって、定期的に重要なウェブアプリやデータが2カ所で同期されるようにもできる。
ひとことで言えば、マルチクラウドによる障害復旧は理論的には簡潔だ。しかし、現実的な実装とその管理はあっという間に複雑化してしまう場合もある。