配車アプリ「JapanTaxi」を支える分析基盤--マルチクラウドで直面したデータ連携課題

藤本和彦 (編集部) 2019年09月11日 07時00分

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 タクシー配車アプリを展開するJapanTaxiは、タクシー業界にデジタル技術を取り入れることで変革を起こしている。

 2011年に提供を開始した「JapanTaxi」アプリは2019年8月に800万ダウンロードを超えた。タクシーの手配や予約から料金の支払いまでをアプリだけで利用できる点が特徴だ。当初は全国10都道府県からスタートし、現在は全国47都道府県を網羅。約900のタクシー会社・約7万台のタクシー車両でネットワークを形成している。

JapanTaxi 次世代モビリティ事業部 モビリティ研究開発グループ データエンジニアの伊田正寿氏
JapanTaxi 次世代モビリティ事業部 モビリティ研究開発グループ データエンジニアの伊田正寿氏

 2017年には、タクシーの後部座席に設置する車載端末「JapanTaxiタブレット」の展開を始めた。タクシーの乗客への広告配信のほか、QRコード決済を可能とし、2018年からはクレジットカードや交通系ICカード、電子マネーにも対応する「決済機付きタブレット」も展開している。また、多言語にも対応するなど、タクシーのユーザビリティーを最適化するサービスとなっている。

 直近となる2019年4月には、アプリユーザーからの注文をコールセンターを介さず受け取ることができる乗務員向けタブレット「JapanTaxi DRIVER'S」の全国展開を始めた。この端末は、メッセージや通話に対応しており、ユーザーと乗務員が直接やりとりをすることができる。タクシーを手配した後に生じた細かい変更などにも柔軟な対応が可能になる。

 同社は、こうしたアプリやサービスから日々大量のデータを収集・蓄積している。例えば、注文データや決済データ、ユーザーの属性データ、アプリの利用ログ、タクシー車両の位置情報、広告の配信データなど幅広い。これらのデータを、primeNumberが提供する「trocco」を活用してGoogle Cloud Platform(GCP)のデータウェアハウスサービス「BigQuery」へ集約・加工し、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの「Tableau」でレポートを作成している。経営層や営業向け、マーケティング向け、プロダクト向けなど、さまざまな重要業績指標(KPI)を可視化し、チャットツール「Slack」で日々配信している。

 データ活用については、数字という客観的な事実をもとにアクションを取り、サービスを向上させていく文化の醸成が重要だと、次世代モビリティ事業部 モビリティ研究開発グループ データエンジニアの伊田正寿氏は話す。

 具体的には、「どういうユーザーがサービスを継続的に利用しているのか」「アプリがどのように使われているのか」「自社のプロダクトやサービスでボトルネックや不具合が発生していることはないか」といった点を、データエンジニアと現場担当者が協力しながら分析・理解しているという。

 同社では、GCPに加えて、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなども組み合わせたマルチクラウド環境で業務システムを構築・運用してきた。データ分析のためには、各クラウドのデータをBigQueryに集める必要があり、データ連携ツールとしてオープンソースソフトウェア(OSS)の「Digdag」と「Embulk」を活用していた。ただ、エラーや不具合への対応などを少ない分析チームでやりくりせざるを得ず、運用に課題があった。

 そこで、大手ベンダーのデータ連携/ワークフローツールに切り替えるが、ここでもデータ量が増加したことによるコストの増大、データソースからベンダー側とベンダー側からBigQueryをつなぐ部分の二重開発、ベンダー環境を間に挟むことによる個人情報の二重管理といった課題が顕在化した。

 「われわれはデータ基盤の運用ではなく、データの分析作業に時間を割きたかった。少ないメンバーでトラブルの対応やデータの管理をするには限界があった」(伊田氏)

 これらの課題を解決するため、再度、データ連携/ワークフローツールの移行を検討する。今回ワークフローツールには、GCPの「Cloud Composer」を選んだ。同社はBigQueryをデータ分析基盤の中核に据えているため、マネージド型の同サービスに乗り換えることで、運用負荷を軽減できると考えた。

 データ連携にはSaaS型ツールの「trocco」を活用。データソースからBigQueryに直接データを転送できる仕組みを整えた。troccoはEmbulkをベースとしているため、運用ノウハウを持っていた点も選定理由の1つとなった。

 また、troccoのジョブ実行を制御するAPIが用意されているため、Cloud Composerで一元管理できるようになった。2019年7月に本番運用が始まってからは、分析基盤へのデータ統合に関連したエラーは発生していないという。

 troccoとCloud Composerの組み合わせによって、「大手ベンダーのときからコストを半分にできた」と伊田氏は話す。さらに、troccoでは、データ抽出元のデータベースで動いているSQLをそのまま利用できるため、開発と教育にかかるコストも下げられたとしている。

 JapanTaxiでは今後、従業員の増加に伴いデータ分析基盤の全社展開を進めるとともに、タクシー会社向けのBI機能の強化、機械学習モデルを活用した課題解決などを図っていくとしている。また、タクシー車両から取得した情報などを活用した新たなデータビジネスの創出も視野に入れている。

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