アドビ システムズ(品川区)では、PDF編集ソフト「Adobe Acrobat」と電子署名サービス「Adobe Sign」を含めたクラウドサービス「Adobe Document Cloud」を提供。ドキュメントの共有や管理、ワークフローの機能などを提供している(ソニー銀行も利用している)。

Mark Grilli氏
米本社でDocument Cloudのプロダクトマーケティングを統括するバイスプレジデントのMark Grilli氏は、ユーザー企業がデジタル化に取り組む現在、「市場はかつて経験したことがないほどの活況を呈している」との認識を示す。
AdobeがPDFを開発してから既に25年以上が経過している。当初は、どこでも同じイメージのドキュメントを閲覧できる、ポータブルなドキュメントフォーマットとしてスタートしたPDFだが、その後フォーム機能やワークフロー機能などを取り込んで発展を続けている。
さらに、Adobe Signは、従来紙の書類に対して行っていた“サイン(署名)する”という作業を電子化することができ、PDFやその他の電子的なドキュメントと組み合わせることでワークフロー全体をデジタル化し、自動化するための基盤となる。
紙からデジタルへ
従来、企業内のワークフローに紙を利用していたのは、承認を行う際に署名(サイン)を必要としてきたためだ。しかし、PDFやAdobe Signによってこの処理がすべてデジタル化されたことで、同社にとって大きなビジネスチャンスが生まれている。特に日本では、企業内で紙で業務を進めている企業が多数存在しているため、チャンスもまた大きいという。
Document Cloudで提供される各サービスに共通するテーマを「デジタルコンテンツにおいて物事を成し遂げることが従来以上に容易になる」と説明する。「サインする」「紙の書類をデジタルに変換する」「PDFを編集する」「フォーマット変換を実行する」といったさまざまな作業に存在する障壁を取り除き、今まではできなかったことができるようになり、デジタルコンテンツに対して実行したい作業をより簡単にできるようにするという。
同様の目的で使われる他のシステム、たとえばMicrosoft製品などとも連携している。というのも、業務にはオフィスアプリケーションが欠かせないものであり、一方で全ての業務がオフィスアプリケーションだけで完結できるわけではなく、オフィスアプリケーションの外で作業を行う必要が生じることも珍しくないためだ。
Acrobatは当初は永続ライセンスのPCアプリケーションとしてスタート。2015年からサブスクリプションライセンスも用意する「Acrobat DC」の提供を開始した。
クラウド化やサブスクリプション化は、ユーザーの要望に応じた結果だというが、実際には「クラウド化してほしい」「サブスクリプション化してほしい」という要望があったということではないという。「ユーザーが望んだのは“継続的なイノベーション”や“投資からできるだけ早く価値を得ること”“コネクティビティ”といった要件で、『ドキュメントやアプリケーションをデバイスやプラットフォームをまたがって利用したい。分断された“サイロ”は困る』といった要望だった」(Grilli氏)。これを満たすために最善の手段としてAdobeが選んだのがクラウド化ということだ。同社では、従来の18カ月ごとのアップデートの代わりに毎月アップデートを提供する形に移行した。