日本市場のデジタル化
日本市場はグローバル市場に比べると、新しい技術や変化を受け入れるのに時間を掛ける傾向があると言われる。しかしGrilli氏は「個人的な体験だが、11年前に初めて来日したときに地下鉄の車内で多くの乗客が“ガラケー”にジャラジャラとストラップをぶら下げて使っているのを見たのだが、その2年後に再び来日した際にはほぼ全員がスマートフォンに変わっていた。つまり、日本市場は“変化を受け入れるまでに時間が掛かるが、一度変化が始まったら一気に変わる市場”だと思う」と語る。
その上で、Adobeの市場戦略として同氏は、「グローバルでも日本でも同様に、ユーザー企業がデジタル化に向けた変革を推進していく際のパートナーになろうと考えている。新しい働き方を模索する中で、デジタル化によってより優れた体験を実現できるように手助けしていきたい」という。
なお、デジタル化やペーパーレス化に取り組む際には、「一度に全てを変えようとすべきではない」(Grilli氏)という。まずは1つのユースケースやビジネスケースに絞り、そこで新しいやり方を採り入れながら新しいテクノロジーがどのようにビジネスに役立つのかを経験し、そこから徐々により対応領域を拡大していく、という手法がベストプラクティスと説明。従来なじんだ仕事のやり方があるので、それを変えるのは容易ではない。しかし、変えることで得られるメリットが理解できれば、変更を受け入れやすくなるという。
PDFに関しても、単に25年前のテクノロジーをそのまま続けていくのではなく、今のモバイル環境での仕事のやり方の中で価値をもたらす方法を考えていく必要があるという。たとえば、かつては「ドキュメントに話しかける」ということは想像もしなかったが、次の世代では音声認識が常識となっていくという変化が起こり始めている。こうしたチャンスを受け入れて対応していくことで、大きなビジネスチャンスが得られると指摘する。
なお、Grilli氏は「Adobeが手がけているのはECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント)やストレージサービスではなく、人々がドキュメントを活用してやりたいことを実現するためのアプリケーションだ。そこで、市場に多数存在するEMCベンダー、BoxやDropbox、Microsoft、Google、これらの企業は全て協業すべきパートナーである」とした上で、同社の強みを「市場でもっとも完成度や信頼性が高いツールを提供しており、しかもPDFの標準に100%合致するツールを提供する市場で唯一のベンダーでもある。合わせて、Adobeはさらなるイノベーションを実現するために他のどのベンダーよりも多額の投資を継続している」と語った。