セゾン情報システムズは11月7日、企業ユーザー向けの年次イベント「HULFT DAYS」の開催に合わせ、報道機関向けに事業説明会を開催した。現在注力している事業の「リンケージ・ビジネス」、HULFT事業のビジョン、データ連携ソフトウェアの新機能などについて説明した。
リンケージ・ビジネスでは、「HULFT」や「DataSpider」などのデータ連携ソフトウェアを中核に、海外の有力SaaSと社内システムをつなぐ連携サービスや、全社統合型のデータ連携基盤の構築サービスを提供する。3年ほど前に立ち上げた新規事業で、同社の今後の成長の柱に位置付けられている。SaaSの導入では、経費精算の「SAP Concur」、ビジネスインテリジェンス(BI)の「Tableau」に対応する。
リンケージ・ビジネスの概要図
いずれも実際に社内で導入・運用し、認定パートナーの資格を取得するなどノウハウを蓄積した上で、導入サービスの展開を始めている。代表取締役社長の内田和弘氏によると、同社は現在、人事管理の「Workday」、財務管理の「Kyriba」、経理財務の「BlackLine」の社内導入を進めており、将来的にはこれらのSaaSの導入サービスの提供も検討しているという。
デジタル変革(DX)によるデータ連携ニーズの高まりやSaaS活用のトレンドが後押しとなり、リンケージ・ビジネスの業績は好調に推移している。事業の立ち上げ当初から“「倍々ゲーム」(内田氏)で伸びており、2020年3月期(上半期)の売上高は4億6230万円、導入数は115社になっている。
セゾン情報システムズ 代表取締役社長の内田和弘氏
HULFTは1993年の発売以来、導入社数は9800社、販売本数は約21万本に上る。全国銀行協会の会員銀行で100%、日本自動車工業会の会員企業で100%の導入率になるなど、市場から高い評価を得ている。取締役 HULFT事業部長の山本喜久氏は「社会インフラとして活用されている」と強調する。
同社が今後の将来のビジョンとして掲げるのが、「Data Management Solution」というコンセプトだ。これは、HULFTやDataSpiderを中核としたソリューションとして、従来のデータ連携という位置付けから、データ管理へと領域を拡大させるものになる。具体的には、「Data Entry」「Data Identification」「Data Integration」「Data Quality」「Data Prep」といったデータの加工、集積、可視化、連携、準備の各段階に対応した製品を今後3~5年かけて開発していく計画だ。
Data Management Solutionのイメージ図
これにより、自由にデータをつなぐことで発見・理解・発想を促し、情報を有用な知識へと進化させるためのデータ管理基盤の構築を目指すという。
会見では、HULFTでAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といった主要クラウドとのデータ連携を可能にする新機能「クラウドストレージオプション」を発表した。これは、オンプレミスにある既存システム上のデータをHULFTでクラウド上のオブジェクトストレージ(Amazon S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storage)に転送可能にするもの。クラウドでのデータレイクの構築、バックアップや大容量データの退避手段などに活用できる。
セゾン情報システムズ 取締役 HULFT事業部長の山本喜久氏
実際、セゾン情報システムズでは、災害復旧(DR)用のバックアップストレージをクラウドに移行し、そこへデータを連携させることでコストを42%削減したという。
また、機械学習自動化プラットフォーム「DataRobot」とDataSpiderをつなぐ専用アダプターのリリースも明らかにされた。これは、8月に発表された両社のテクノロジー・アライアンス契約の締結に基づくもので、さまざまなアプリケーションやデータソースとDataRobotを連携させることで、AIや機械学習の活用を促進するとしている。